二羽の鳥が羽ばたいて

□2.明かされた真実
1ページ/5ページ

****

お願い、お願い。

もう、赦して。

****

「どういうことだ、舞衣」
酷く落ち着いた語調で、いや、自分を抑え込んだような語調で、家に入ってからすぐにネジはあたしに問いかけた。

…騙しているという自覚はあった。
でも、これ以上のすべてを告げたくはなかった。
これは、あたしの誇りなのだ。
かなえたい願い、夢。

ふと、2年前のあの日、ガイ先生の前で言った言葉がよみがえる。
半分正解で、半分間違いのあのお願い。
本当の解答が、脳裏に浮かびあがった。

――父上や母上のような立派な忍になりたい。
誰かを守れるような、立派な忍に。

…手放すわけにはいかなかった。
この罪を、絆を、壊すわけにはいかなかった。
でも、きっと今はもう違うのだろう。
この罪も、絆もなくても、きっとあたしは生きていけるのだろう。

――彼が、現れてしまったから。

ネジとあたしの大切なものの論点もきっと違うのだろう。
このまま話さないでいたら、あたしはさらにまた、別の罪を背負うことになる。
…いや、もう背負っているのかもしれなかった。

「ごめんなさい…」

****

人は生まれながらにして、一つのチャクラ属性を持つ。
修業によって、もう一つチャクラ属性を手に入れ、新しい術を開発する者もいる。
そこから血継限界を生み出したりと、用途は様々。

しかし、美瑛一族は特殊だった。
美瑛一族は、チャクラ特性にあまり関係しない。

彼らが必要とするのは、伝心法という力のみ。
それは、山中一族と似る点もあるが、少し違うところがある。
山中一族は心への強制介入を可能とするが、美瑛一族はそれが出来ないということだ。
必ず何らかの合意を得る必要がある。
…それが、「逆らうことはできない」という無意識的強迫観念でもいい。
兎に角彼らには、それが必要だった。

では、現象法とは何なのか。
これが、美瑛一族の最大の謎なのだ。
誰も、どうしてこれが使えるのかを知らない。

もともと自然と心を通わせる力が備わっていた。
神に見初められたと考えるしかなかった。

しかし、だ。
自然の心に介入するにも、力を借りるにも、何らかのリスクというものは存在するのだ。
この世に都合のいいものは存在しない。

それが、寿命というリスクだ。

現象法は、自然を操る代償として、自分の命をささげているのだ。
使えば使うほど体は衰弱していく。
最初は軽い咳程度のものから、次第にめまい、微熱へ。
吐血してしまえば…もう、戻れない。

スタミナの低い少女が、なぜこうも簡単に「天才」の名を手にすることが出来たのか。
その力の代償は存在しなかったのか…。
その疑問の答えのすべてが、其処にあった。


「ごめんね」と、彼女はあきらめたような表情で笑った。
…彼女は、どうしてここまで苦しむ必要があるのだろうか?
これ以上苦しむ必要が、どこにあるのだろう?
ネジは考えた。
しかし、答えは見つからなかった。

その最中も、彼女は言葉を紡ぎ続ける。
淡々と、それでも笑顔で。
それは…演技をしていたころの表情でも、いつもの表情でもない。
彼女が、彼女自身に審判を下しているかのようだった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ