二羽の鳥が羽ばたいて
□3.波乱の旅行
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この日々はいつまで続くのだろう。
壊れないで、壊さないで。
続く限り、どうか、どうか。
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あれから、どれだけの日数が過ぎただろう。
答えが見つからないまま、時間だけが通り過ぎていく。
奪われていく命とタイムリミット、葛藤…すべてが、あたしの胸にナイフとなって突き刺さる。
ガイ先生に久しぶりの呼び出されたのは、そんな嵐の中に飲み込まれていた時だった。
「先生なんでしょうか…手短に頼みます」
本当はうれしいくせに、何をバカなことを。
心の中で自分に毒づきながら、あたしは苦笑してみせる。
四人はそんなあたしの心境なんて、もうお見通しなのだろう。
普通に、いつも通りの表情をしていた。
つまり、微笑んだり無表情だったり、である。
「舞衣、実はな…この前商店街で短冊外の旅行チケットを手に入れたんだ」
「!…すごい…でもどうしてそれをもっと早く言わなかったの?」
「…舞衣、聞かなくてももうわかるでしょ」
苦笑しながらテンテンがあたしの肩を叩く。
…ああ、なるほど、忘れてたのか。
で、このタイミングで言うということは、つまり。
「では明日10時に甘栗甘に集合だ!予定を何としてでもあけておけ!!」
…やっぱりそうなったか。
あたしたちは、顔を合わせてもう一度苦笑い。
この男のマイペースさ加減にも、いい加減慣れてきた。
それになんだかんだ言って旅行は楽しそうだ。
ネジもいる。テンテンもいる。リーもいる。
良い思い出ができそうだと、今度は苦味を消した笑みを浮かべた。
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「歯磨きブラシに歯磨き粉に…ねぇネジ、ブラジャーの替えとかって何着いるかしら」
「…よくもまぁそんなことを男に聞けるな、お前は」
「やだ。冗談よ」
隣で荷物を詰めながら、ふてぶてしく眉をひそめるネジにあたしはまた苦笑した。
本気でそんなデリカシーのないこと聞くわけないじゃない、ネジったら本当に馬鹿ね。
…言葉にしてしまったら、また前みたいに怖いネジになりそうだから黙っておこう。
「ねぇネジ、今日寝る前に何する?
羊って何匹くらい数えたら寝られるかしら。
瞑想って何時間したら寝られるかしら」
「お前は遠足が待ちきれない子供か!」
…ああ、デンプレート通りの回答をありがとう。
なんてことも言ったら怒られるだろうか?
でも、今なら何をされても楽しく感じられるような気がする。
…やっぱり怖いのは、いやだけど。
「とにかく、移動中具合が悪くなっても困る。
眠れなくてもいいから布団に入れ。目を閉じろ」
あたしの周りに散乱している荷物を、全て鞄に詰め込んだネジが、ぽんぽんと頭をたたいてくる。
…なんだか、お父さんが子供をあやすみたい。
お母さんは誰だろう、空羽?
…それは複雑だからお母さんはいないことにしておきたい。
(でも)
さっきよりは眠れる気がした。
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まだ日がそんなに高くない頃。
言われた集合時間よりも早くの集合。
いつもと同じ、セオリー通り。
二年前から変わらないペース。
そしてその光景を見たガイも、セオリー通り満足げに笑う。
それから、大きく息を吸った。
「では、出発だ!!」
里中に響き渡ったその声は、周りの空気をかすかに振動させた。