二羽の鳥が羽ばたいて

□3.高鳴る鼓動
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分からなかった。

どうして、自分はこんなに慌てているのかなんて、

それでも、走り続ける。

疑問を、捨てて。

ただ、声が聞こえる方向へ。

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それは突然やってきた。
いつものようにあたしが読書を楽しんでいたときに、鳴り響いたチャイム音とともに。

全く…『Prism』を読んでいる途中だったのに…。
せっかくいい場面だったのにと、残念に思いつつ玄関に行くと、僅かに視界がぐらりと揺らぐ。
ネジだった。
この間抱きしめあって、あたしが本音を漏らしてしまった相手が、扉の前にいたのだ。
落ち着いて、落ち着いて話をしようと、冷静になろうと小さく深呼吸をする。
それでも、あたしの眼は無意識のうちにそれていた。

「ネジ…どうしたの?」
「…うちは サスケが、大蛇丸のところに里抜けをしたらしい」
「!」

そんな緊迫したセリフを、誰が予想しただろうか?
うちは サスケ…中忍試験であの我愛羅と戦ったうちは一族の末裔。
友達にもなれた、本当に良い人なのにどうして…しかし、それを考える暇などなかった。

――時間が無いことは、明白だったから…。

「それでだが、奪還任務にオレとお前が選抜された」
「…解ったわ。すぐ準備する」

しかし、それでも疑問が残っていた。
あたしは医療忍者ではないし、たとえ使える術が遠近対応でも、役に立つところがあるか全くわからない。
なぜあたしが呼ばれたのだろう?
そんな考えごとをしながら、支度をしてから家を出た。

****

「タイムリミットだ。とりあえず6人は揃ったな…」
シカマルがそう言い放った通り、そこにはネジ、舞衣、シカマル、チョウジ、キバそしてナルトがいた。
此処まで連れてくるときに一応いた、先程から一言も話さないリーを、舞衣がちらりと見る。
ものすごく、一緒に行きたそうな顔をしていた。
だから…ネジと舞衣は、リーに言う。

「リー…お前はお前のやるべき事をやれ」
「手術、成功するといいわね」
「…!ハイ…2人とも…」

ぱぁあっと、リーは丸くて大きな目を輝かせて頷いた。
よかった…すっかり、元気になったんだ。
舞衣の頬が、自然とわずかに緩む。
それは、今までにはなかった現象。

しかしそのとき、和やかであったムードを台無しにするように、ナルトが唐突に叫び、その表情は無表情にたちまち戻った。
「んじゃさっさと行くってばよ!
皆オレについてこーい!」

…白けたな、と全員の気持ちが重なる。
代表して、シカマルが呆れながらナルトに言った。
「あのなぁ…一応小隊長オレだからな」
…しかし、そうはいっても心配な部分が多い。
いくら中忍とはいえ、彼はまだ未熟なのだから。

そんな舞衣の気持ちを察したのか、それとも自分もそう感じているのか、それはわからない。
「それならそれ相応に作戦や計画を立ててくれ」と、ネジがそう言うと、シカマルは頷き、淡々と作戦を述べだす。
それは、実に的確な作戦かつ、考察だった。


「…とりあえず救出作戦としてこっちが追う立場になる。
敵にも先手をとられやすい…つーことだ。
だからこれからそれにすぐ対応できるフォーメーションを立てる」

そして決まったのは一列縦隊。
先頭は赤丸と二人で効率のいいキバ、次が真後ろからキバに命令をだせるシカマル、中心がナルトで援護の要だ。
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