二羽の鳥が羽ばたいて

□1.もう1羽の籠の鳥
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あなたが嫌いだ。

今度はあたしを救うと言うの?

そんな人種が一番嫌いだ。

そう、あなたみたいな…

わかったようなことを言って、結局は何もできない人が。

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木ノ葉崩しが終わり、ガイ班が再び任務をするようになって、早ひと月。
任務はいつも同じもの。
Dランク任務で、壊れた建物の修復の手伝いを1日する。
簡単なものだが、現在の里には何よりも必要な任務だ。

集合地点にはもうテンテンとガイ、ネジがいて…テンテンがイライラした表情で、溜め息混じりに言った。
「遅いわね〜舞衣。何してんのかしら」
そう、テンテンたち3人は、チームメイトである舞衣を、30分も待っていた。

普段、彼女はめったに遅刻をしない。
彼女にしては、いくらなんでも遅すぎる。
(まさか、何かあったのか?)
ネジは静かにため息を吐く。
少し前の自分なら、こんな心配をしなかっただろう。
自分が知っていた舞衣の幻想が、崩れる前までは―――。

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美瑛 舞衣は日向一族と親戚の美瑛一族の分家。
アカデミーではだったNo.1の彼女は明るく誰に対しても優しい、たまに言葉はキツいが。
それが、最近までのネジの抱く彼女のイメージだった。
あの中忍試験で、見た能面のような彼女の顔と、彼女の口寄せ動物である空羽が、助けを求めて来るまでは、彼は彼女のことをそう思い続けていた。

しかし現実は違った。
綺麗だった羽根はもぎとられ、籠に閉じ込められた黒く歪んだ道化師、それが彼女の正体…ネジはもう一度ため息を吐く。
そのとき、明るい声があたり一面に広がり、ネジは顔を上げた。

「ごめんね、遅くなった!」
「遅いぞ舞衣!オレは舞衣がこないから腕立て伏せ1000回をして待っていたのに!」
「あははごめんね!…そして暑苦しい…」
明るい、普通の性格だとまわりは思っている。
こんなにきれいな笑顔を作るのに、彼女はどれだけの苦労をしたのだろうか?

「舞衣!服崩れてるわよ」
「えっ!?ヤバっ」

…よくよく観察をすると、舞衣の笑顔は嘘っぽく見える。
それに、笑ったあとの顔が酷く冷たく、無表情で…それはナルトと戦う前のオレと、通ずるところがあるのではないだろうか?


「青春は待ってくれないぞ──!早く行くぞ!舞衣!ネジ!テンテン!!」
うるさすぎる鶴の一声が、里中に響き渡る勢いで、彼らの耳に届く。
いつもよりもうるさいその声、一人欠けている寂しさを埋めるためのものか。
それに気づいたか否かは定かではないが、テンテンは「もー先生うるさい!」と、笑って歩き出した。
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