二羽の鳥が羽ばたいて
□プロローグ
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あなたにとってそれは本当に些細なことで、
本当にちっぽけなことだったでしょう。
でもあたしにはそれが、
全てであり、支えでした。
始まりは最悪だった。
でも、終わりはきっと…。
これは同じ運命を分かち合う、
二羽の鳥の物語。
空を夢みたまま諦めていた鳥の、
再生の物語。
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――あの日のことは忘れられない。
今でも、鮮明に覚えている。
日向と、ある一族の集落を分ける森の中。
雨が降っていたその日、2人は出会った。
その日少年は、一人でその森の中を歩いていた。
さっきまでは降っていなかったのに、急に雨が降り出して、少し早足になったとき、少年は泣いている少女を見つけたのだ。
「…どうした?泣いてるのか?」
思わず声を掛けると、彼女はゆっくり顔をあげた。
綺麗な茶色の髪と眼と、白い肌に浮かぶ×印の痣に、少年は眉をひそめた。
彼に見つめられた少女は、逆に問いかける。
「…だれ?」
「…こっちが聞きたいのだが」
「あたしは──…あなたは…?」
「──だ。何があった?」
「宗家の…兄さんに…恨まれて…──を…つけられた…の…」
少年はそれに目を見開いたが、少しの間のあと、冷静に返事を返した。
「そうか…」
そっけない返事・・・それに苦笑しながら、少女は俯いた。
「運命は…変えられないのよね…どうして分家に生まれたんだろう…」
泣く彼女に彼は、何かを差し出した。
「?」
「…受け取ってくれ。もらいものだし、捨てるに捨てられなくてな」
それは、少年には似つかわしくないピンクの羽のキーホルダーだった。
ふわふわしたそれを、彼女は受け取り、小さく笑う。
「ありがとう…あの、また会えるかな?」
「・・・多分な」
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それから数年後、成長した彼は中忍試験でそれを見た。
(まさか…そんな…)
見つかった少女は可憐に、しかし自嘲気味に笑う。
「ネジがあたしを救ってくれるの?」
ぐるぐると歯車は回る、もう止まらない。
運命は、動き出した。
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