Middledream
□闇に舞う蝶…1
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一日三時間の聞き込みを終え、今日も牢屋の中に入れられる。
昨日も今日も明日も明後日も、きっと変わらない日常。
あれからあたしは、木ノ葉隠れの里に保護されていた。
再不斬さんとどういう暮らしをしてきたか、出会いはどんなものだったのか。
話したくない細やかなことまで、全部聞かれ、話したし、頭の中で何を考えているかも覗かれた。
木ノ葉の人間は、あたしの正体を知ってしまった。
最初は疑われ、拷問にかけられそうになったが、頭を覗ける山中 いのいちさんの証言をみんな信じた。
いのいちさんは、あたしの過去すべてを知ってしまった人。
出来れば殺して口封じをしてしまいたいが、そんなことをしたら逆にあたしが殺される。
そして、そんなことを考えてしまうあたしも、物騒だなとふと思う。
本当ならいのいちさんだけではない、全員殺して逃げ出したいところだ。
だけど今のあたしには再不斬さんに白という矛がない。
あたしは再不斬さんの盾だから。
なのに、持ち主が盾を守って、矛も盾を守った。
あたしなんて、この世界には必要ないんじゃないか…?
この世界に来たことは迷惑なことだったんじゃ…?
そんな、今更どうにも出来ない結論が出たときだ。
この部屋には監視カメラがある、だから気づけば手を首にあてている今のあたしの姿は、誰かにしっかり見られている。
だから、かもしれない。
ガチャリと、開くことのなかった狭い小部屋の鍵は、いとも簡単に外れて。
目の前には、髪の長い男の人が、無表情で立っていた。
「お前の、保護者だ。いのいちに心を覗いてもらったとき、はっきりした」
何のことかさっぱりわからなかった。
けれど、目の前にいる女の人みたいに綺麗な男の人は、つかつかとこちらに歩み寄ってきて、そして静かに。
「…!」
抱きしめて、来た。
「やっと、見つけた」
優しい声、優しい抱擁、しかしあたしには何故か、その腕や声は、絡みつく蛇の身体のように、決して逃がさないとするようで。
それが気持ち悪くて、突き飛ばそうと、自由だった手を動かしたが、そのときビリィッと、頭が痺れる。
その瞬間、一気に頬が冷たく冷えていって、雨が降り出した。
おかしいな、ここは室内なのになんで雨が降るんだろう?
わけがわからなくて、何が何なのかさっぱりわからなくて、でも、何故か、この手を離してはいけない気がした。