Middledream
□闇に舞う蝶…0
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世界が消えてしまえばいいと思った
でも何度願っても空にヒビは入らなくて
あたしはただ
声を枯らして泣いた
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表現方法が見つからない出会いだったことを、よく覚えている。
あの日、目を覚ましたとき、目の前に広がった青空を、まだ覚えている。
そして、「大丈夫ですか?」と言いながら、綺麗な微笑みを浮かべて、手を差し伸べてくれた人も。
あの日、あたしは逃げることに成功したんだと、ほっとした反面、泣きそうになったことを……忘れないまま、覚えている。
あたしのこの変な能力も、この世界では馬鹿にされない。
それどころか必要とされていて、あたしはすごく嬉しかった。
「道具」
たとえそう言われても、あたしにとってその言葉は救いだった。
廃棄されるだけのあたしが、また、生きられる理由を得たんだから、それに。
「この闘い、必ず勝ちます。だから…恋人として見てもらえませんか?」
あたしが生きるきっかけを作ってくれた人からの、告白。
それら2つさえあれば、もうあたしは絶望なんてしない。
あたしは、この世界で、この人達と、生きられるのだから──…。
闇に舞う蝶
ぽたりぽたりと、ちらつく雪が煩わしかった。
灰色の世界に、飛び散った血飛沫。
あたしの身体には、特定の人間の血だけが付着していた。
「白…」
その安らげな顔に手をあててみると、ひやっと冷たい感触がした。
「再不斬さん…」
いつもは、あまり触らせてくれなかったその手に触れる。
その手も、とても冷たく感じた。
「2人共…起きてよ…」
どくどくと流れるその赤い川に触れる。
その川は、やけに暖かくて、でも地面に流れる川は冷たかった。
「嫌だよ…」
じんわりと視界が滲んで、愛しい人たちが見えなくなっていく。
白く染まっていく世界と同時に、何故か消えていく意識。
嫌だ。
嫌だ。
嫌だ。
嫌だ。
嫌だ。
何もかも認めたくなくて、今にも何もかも投げ出してしまいそうな状態で、すべての力を振り絞って、あたしは叫んだ。
「嫌だぁあああああああぁあああ!!!!!!!
死んじゃやだぁああああああああ!!!!!」
白が、再不斬さんが死んだ。
それはあたしにとっては、絶望に叩き落とされたも同然の事実だった。
命だに 心にかなふ ものならば なにか別れの かなしからまし
(永遠の別れじゃなければ、きっとこんなに涙は流れなかった)