日向の
□届かない愛してる
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気づくことができなかった
あの落ちこぼれに抱く感情に
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「ネジ…兄さん」
オレを呼ぶのは誰だ?
「ネジ兄さん…」
嗚呼、ヒナタ様か…闇のなかに佇むヒナタ様にオレは眼を見開き問いかけた。
なぜアナタがオレを呼ぶんだ?と。
すると彼女は悲しそうに、しかし真っ直ぐオレを見て言った。
「兄さん…私は……あなたを……信じてます…」
何が言いたいんだ?…そう叫ぼうとしたとき、彼女の前にぼんやりと小さな少年が現れた。
いつの間にか、ヒナタ様は小さな少女に変わっていた。
「ねぇ、ヒナタさま。約束ですよ」
「うん、約束」
「僕があなたを守りますから」
「私があなたを支えますから」
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差し込んでくる光にオレの眼は自然と細まった。
「…夢か」
3日前に中忍試験が終わったばかりだからか、急にヒナタ様が夢に出てきた。
あの中忍試験予選…正直に言うと本当に後悔していた。
ヒナタ様や宗家に対する恨みもあった、勿論今はそんなことを微塵も感じていないのだが…今ならなんとなくわかる。
ナルト…あいつがヒナタ様の支えになっているのがなんとなく苛立つのだ。
『うずまき ナルト…面白い男ですね』
そうオレがちょっと言っただけで彼女は嬉しそうに笑っていた、それを思い出したらまた胸が痛む。
「なんなんだ…一体」
小さく呟いても答えは勿論出なかった。
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「ネジ…アンタって天才だけど馬鹿よね!」
結局、オレは修業の合間にテンテンに相談するしか道はないことを悟り、テンテンに恥ずかしながら今の気持ちを打ち明けた。
「…何故だ?」
「それ…ヒナタちゃんがナルトばかり見るから嫉妬したのよ!」
「ネジが嫉妬ですか!?」
オレよりも先にリーが叫んでくれたおかげか思考が早く追いついてくれた。
どうやら思考回路はまだ正常らしい…落ち着いてテンテンの次の言葉をオレが待っていると、テンテンは溜め息を発した。
「いい?嫉妬は好きだからするのよ?つまり…アンタはヒナタちゃんが好きなのよ!」
そのとき、オレは次に何を紡ごうかなんて考えられなくなった。
オレが…ヒナタ様を?確かにヒナタ様が誘拐されたとき、あのときは宗家も分家も関係なく助けに行ったが、恋愛感情らしきものは…いや待て。
ふと幼い頃の記憶がよみがえってきた、「可愛い子ですね。父上」とヒナタ様に呟いたあのときのこと。
そして…憎いはずなのに視界に彼女を入れてしまう自分…それなのにオレは自分の気持ちに気づかないまま、ヒナタ様を…殺そうとしたっていうのか?