二羽の鳥が羽ばたいて
□6.修羅に染まりし人
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美瑛一族とは不思議な一族であり、神に近し一族だ。
自然を操り心を見る、あまり宗家や分家を気にしない自由な一族。
しかし1人だけ、それは許されなかった。
羽根を折られてしまったのだ。
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集合場所にネジが行くと、リーとテンテンは目を見開いて、ネジに背負われている舞衣を見た。
「舞衣…どうしたのよ!?」
テンテンとリーは慌てて駆け寄り、ゆっくりと、衝撃が加わることのないように舞衣を寝かす手伝いをしながら問いかける。
「わからない。ただ、突然…息が出来なくなったように苦しんで…」
しかし、ネジの答えは二人が望むようなものではなかった。
“額宛を取ることを強く拒み、気を失った。”
それが本当の理由、しかし、ネジはそれを言うことはできなかった。
ネジは静かに、食料を食べるようにと、リーとテンテンに促す。
…今は、彼女のことはどうにもできない。
自分にできることは、この混乱した状況を纏めることだ。
「…もう小1時間で空が白むだろう…1日使って食料と水は確保できたし。
活動を休止しているチームがほとんどだ…予定通り、この時を狙う。
いったん3人で分かれて各自30分間偵察に行く。
ただし…他のチームを見つけても見つけなくても」
そう言いネジはクナイを地面に刺した。
「この場所へ戻ってくる。いいな!」
「オッケー!」
「ラジャー!!」
「あ、でも舞衣は?」
「オレが背負っていく」
「そっか。りょーかい」
「よし…散!!!」
そうしてそれぞれバラバラになっていく。
残ったネジは、舞衣を背負い、ゆっくりと歩いていく。
それにしても軽い。
本当に彼女はきちんと食事をしているのだろうか?
(…まさか)
ネジは静かに、舞衣を落とさないように片手を彼女の裾に持っていく。
捲ると、そこには赤い痣がついていた。
はじめてこの痣を見てからもう一年。
これらは絶えることはなく、注意深く彼女の腕を見ていればそれは確認できた。
(虐待か。凌辱か…それとも彼女が隠れて修業をしているだけか。
なら、あの時隠す必要はなかった。
もしかして、今回のことも・・・ん?)
何かの、気配。
しかも、どこかで感じたことのあるような…。
(…無視するか)
こんな風に気配を垂れ流す奴らから、巻物を奪っても恥ずかしいだけだ。
相手には困らない、強ければ強いほうが奪いがいがある。
…そう思ったが、なにやらこそこそとしていることに気づいた。
まさか自分から巻物を奪うつもりはないだろうが、これはこれ煩わしい。
「こそこそ隠れず出てこい…」
そう言ってから数秒、出てきたそいつらは、アスマ班の三人。
何だ、こいつらか。
ため息を吐いてネジは素通りしようとしたが、女があっと呟いた。
「あれ?その人…舞衣さん?なんで気を失って…」
「?…いの、あの人のこと知ってるの?」
「ええ。よく花を買いに来るわ。話したこともないし、同じ下忍だっていうのも一次試験の時に見かけて分かったんだけど。でも、なんで…」
「お前たちには関係ない…去れ」
スタスタと歩くネジに、いのは苛立ちを覚え思わず拳を握り締める。
しかし、ネジにはそれを白眼で見ていたため、お見通しだった。
「オイ…今オレに拳を向けてるってことは、オレとやり合うってことか?」
「!…い、いえ、まっまさか…」
「なら去れ!
お前たちから巻物を奪っても、里の笑い者になるだけだからな…」
その言葉ののち、瞬時に姿を消した3人を見てネジは、まるでゴキブリのようだなと、思いながら、次の場所に向かった。