二羽の鳥が羽ばたいて

□2.二つの表情
1ページ/4ページ

****

不思議だ、あなたといると運命は変わらないということを忘れそうだ。

でも現実は甘くない、だからこそ悲しくて堪らない。

****

今日の空も澄み切っていた。
その下に広がる森と、開けた場所。
其処に立つ5人は、集合30分前にはしっかりとそこに揃っている。
それが嬉しいのだろう、ガイは満足げに頷いた。

「全員集まったようだな…。今日やる演習を早速話そう。
不合格の場合、アカデミーに戻ることとなる・・・鈴取り合戦だ!」

…なるほど。
そうか、どうしてこんなにも簡単に額宛を手にすることが出来たのか、漸く分かった。
ここでふるいにかけていく気なのだ。
忍としての際も十分持ち合わせていて、行動力があり…言葉の裏を読める人間を、選ぶために。
案の定、そのヒントはすぐに提示された。

「オレが持つ鈴は3つ。それを取った者が合格だ!制限時間は3時間!では、よーいはじめ!」

うろたえているリーとテンテンよりも先に、オレは隠れる。
なるほど、もうこの話の意図は掴めた。
此処にいるのは四人、鈴は三つ、当然仲間割れは必至。
…これは、それを狙っているのだ。

とりあえずと、オレは白眼を発動する。
この近くにいるのは、舞衣。
アイツなら、もうこの演習の意図にも気づいているだろう。
万が一のことも考え、オレは、ゆっくりと、彼女のいる場所へ歩き始めた。

****

開始から5分が経過したのではないだろうか?
どうやら、彼女もオレを捜していたらしい。
「あ、いたいた…ネージッ」
小声で、オレの名を呼んで笑った。
「…お前も気づいたようだな」
うん、と彼女は小さく頷く。
そして、この状況が心底楽しいというような口ぶりで、彼女は特殊な印を組み始めた。

「鈴が3つしかないなんて仲間割れに仕向けてるって丸わかり!
…ここで求められることは絶対チームワーク!…というわけで、伝心法」

彼女が、胸に手を当てる。
…間近でそれを見るのは初めてだった。
伝心法、心に関与する美瑛一族の術。
心を見通す、心を発信する、心と心を交換することが出来る術。
主に集団戦の攻撃補助に使用・・・。

けほっと…突然、舞衣が咳き込む。
そして、笑った。
「行こう、待ち合わせをしたの」
どうやらこの演習は、早く終わりそうだ。
特に言うことも思いつかず、オレは何も言わずに頷いた。

****

ネジの白眼で見つけた2人は、舞衣が指示をしたらしい、固まって待っていた。

「ごめんね〜待たせちゃって」
「大丈夫、今集まったわ!」
「それより、作戦を考えましょう!」
「ううん、そんなことしなくていいよ」

…嘘だ。
さすがに、それは信じられなかった。
確かに移動をしている最中は、一言も話しをしていなかったが…何かを考えているような顔には見えなかった。
しかし、当の本人は至って冷静に、それでいて楽しげに笑っていた。

「昔からね、話を考えたり、座って考えることのほうが得意だったの。
無茶振りはいった作戦かもしれないけど…とりあえず、ほかに意見あったら、加えたり改善しよう?」
「わかったわ。それにしても、本当に舞衣って凄いのね!」
「あはは…作戦聞いてから失望されたら怖いな。その言葉」


それは的確な作戦だった。
反論やほかの意見すら浮かばない、この4人だから出来る作戦。

「…いいんじゃない?」
「了解です、舞衣!」
「意義はない」
口々にオレ達がそう言うと、満足というように、彼女も笑った。

「よーし決まり!じゃ、今から作戦開始ね?5分後には、ぜーんぶ終わらせようねっ」

サラリと舞衣はそう言い、鮮やかに笑った。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ