二羽の鳥が羽ばたいて
□2.明かされた真実
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「対処法はあったの。
ほら、あたしって日向の柔拳使えたでしょう?
八卦六十四掌とか使えるほど、点穴も覚えていたし。
…あれね、自分に打ってたの。
少しでも、力を制御できるように」
「でもだめなの。
やっぱりそれをやっぱり30歳くらいが限界。
人って、20歳くらいで成長止まるって話、あるでしょう?
あれって、あながち間違ってないのよね…」
「あたしね、両親が寿命で死ぬところ、見たことあるの。
もう、身体のすべての力を使い切ったって感じだった。
骨も残らないの、灰になって、さらさらって…父上も、母上も、そうして死んじゃった」
「でも、生き延びる方法はあるのよ?
確かに随分危険なところまで来ちゃったけど…今、忍を辞めたら引き返せる」
「だったら!」
そこで、ようやくネジの声が出た。
今まで、出してはいけないような気がしていた声。
【それなら、まだ救いがあるなら、今すぐにでもやめてほしい】
そんな言葉が、願いが、ネジの体を蹂躙する。
しかし、そんな願いは、舞衣の「でも」という言葉に遮られた。
「でも…あたしは忍を辞められない。
止めるわけには・・・いかない」
全てが、白に染まった。
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――ごめんなさいだなんて、本当は言う資格なんてなかったのかもしれない。
それでも、言わずにはいられなかった。
こんな真実、今更伝えるなんて馬鹿みたい。
延命が出来るなんて、なんで言っちゃったんだろう。
黙っておいて、見守ってもらうだけにしたらよかったのに。
・・・そう、わかっていたの。
これは、すべてあたしのエゴだって。
「舞衣様」
壁の隅でうずくまるあたしの傍から、空羽が声をかけてくる。
返事は、できなかった。
悲しくて、苦しくて、言葉の出しようがなかった。
「舞衣様、ごめんなさい」
空羽が、それだけを言って立ち上がる。
それから、廊下へとつながる扉に手を掛けた。
「…ネジとレン様とご両親…舞衣様が一番大切にしたいものは、いったいなんなんですか…」
呻くように呟いてから、空羽は外の世界に消えていく。
残されたあたしは、ぼんやりとした声で呟いた。
「そんなの…わかるわけ、ないじゃない」
そういえば、いつからだろう?
ここはこんなにも薄暗いのに、恐怖を感じなくなったのは。
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どうやら彼女は、落ち込んでいる最中に無意識に空羽を呼び出す癖が備わっているらしい、
オレの部屋へと繋がる扉の前に、空羽がいた。
何でいるのかはわかっている。
嫌いなはずのオレの傍に、こいつが好き好んでやってくるわけがない。
舞衣について、何か話したいことがあるのだろう。
だから、オレは無言で空羽を招き入れたのが、いまからもう30分前。
ずっと黙りこけていた空羽が、いまやっと「あの」と声を上げた。
「…話は、舞衣様のことなんです」
「…ああ、もうわかってる」
「舞衣様は、あの事をあなたに話したんですか」
「…寿命、云々だろう?
あの男…レンのおかげで、聞かざるを得ない状況になってな」
「…今回ばかりは、あなたを責められませんね」
空羽は、静かに頭を下側に向けた。
…本当は、何も聞かずにいることだってできた。
だがおかしいだろう?
何処の世界に、惚れた女が死ぬと聞いて平静でいられる男がいる?
何も聞かずに、普段通りに接するなんでこと、オレにはできなかった。