戦国迷い道

□想い人
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春−−−それは草木の芽や新たな命の息吹きが芽生える……言うなれば“命の季節”または……“恋の季節”


だが国を守る為とはいえ、戦に明け暮れる武士達にはあまり関係のない話だ


寧ろここにいる天下人、徳川家康は温もりの春を感じさせぬほど渋い表情を浮かべている。

しかし堪え忍ぶ強さを持つ穏やかな徳川家康だ……こんな表情を浮かべいるのには無論理由がある


それは……


「…半蔵よ」


「はっ…」


「あの二人は…あれ以上どうにもならぬものか?」


「……忍の一字」


「堪え忍ぶことこそ本分、か」


そう言って再び表情を曇らせる家康と無表情な半蔵の前にいる親子こそ、徳川の悩みの種であった


「父上…お時間がありましたら、どうか私に稽古をつけては下さいませんか?」


「拙者は構わぬぞ……稲、参れ」

「はいっ!!父上」


そんな会話を交わし、修行に精を出す二人−−

言わずとも知れた徳川が最強の守護神−本多平八郎忠勝
そして忠勝の娘−稲姫である


傍から見れば微笑ましい(微笑ましいかは謎だが)親子のやり取りに見えるだろう
無論この二人は仲が悪い訳ではない……ただ一つ問題があるとすれば、お互いがお互いを好いているという事

LikeではなくLoveで…

しかもお互いが相手の想いに気付いてないという何とも歯痒い状態であった。
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