BL短編

□痛い、
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「すごい耳やなあ、財前」


「は?」


「お前の耳や、耳。

いくつピアスついとるんや」




5つです、って言ったら、忍足先輩は大きい黒目をむきだしにしてびっくりした顔をした。





「なっ、5つてあんた!どこの不良や!」




「・・・キンパに言われたないんやけど・・・・」



「俺のは地毛・・・や!」




アホか、何人や。

完全に校則違反な髪の色。
目チカチカしてかなわん。


まあ・・・・似合うてると思うけど・・・。

あ、訂正。

むっちゃ似合っとる。



あなたの太陽とか向日葵みたいな、嫌味な位大きな笑顔にぴーったりです。




・・・俺とは正反対な人。

どちかかと言えば苦手な方。


素直に自分の気持ちを伝えることができて、
みんなの人気者で。


隣におると、どーしても比べられとる気分なるんや。



それが、ただのくだらない嫉妬心だと分かっていても。






「・・・俺が思うにな、」



「?」



「そのピアス、財前のイメージにピッタリなんや。

なんか、か弱い感じがすんねん。」





「・・・・・はあ?」




目の付け所おかしい人やな・・・。


こんだけジャラジャラさせとったら、弱いより強そうに見えるもんちゃうん?



実際穴開けた理由も、ガキに見られるんが嫌なだけで。(そして半分好奇心)





お世辞にも大きいとは言えない身長。
目付きは悪いけど、童顔なんは事実。

忍足先輩から見ると、逆効果になっとるんか。最悪。




「おれ、弱そうですか?」




ん〜?
と忍足先輩が振り向く。
着替えの途中やったから、筋肉質な腹が丸見えや。





なんかなあ、と間髪入れずに答える。




「・・財前て、1人でいるんは好きなんに、大衆でひとりぼっち、は嫌なタイプやろ。」



「・・・・?」





「んーとつまり、寂しがりやで自傷的で儚げで、なんにやけに柔らかいんや!」


「・・はあ。」





「はあ、ってなんか感想はないんかい!」




「なんや抽象的すぎて、ようわかりませんわ」




「・・・でもな、前からそー思っとったんや」





俺には先輩が俺にどんなイメージを持っているのか、それがなぜピアスに繋がるのか、よくわからなかった。



でも、前から、と言った先輩。

明らかに他の先輩より俺のことを見ててくれているのは、わかった。







(・・確かにおれ、引きこもるん好きなわりに、ひとりぼっちは嫌いかもしれへん。)




(・・最初のピアスも、弱くみられたくなくて、へんな意地があって・・・・)





ぐるぐる考えてると、なるほど、先輩が言っている意味が少しだけ理解できた。

つまり俺があまのじゃく、ってのを忍足先輩は気付いとるんや。







とくとく。





(え、とくとく、ってなんや)





なぜか、鼓動が、はやい、





(・・緊張してきもちわるい・・・・
え、これは俺、ほんまに緊張しとるん?)






会話が終了してしまったので、忍足先輩は着替えを続ける。





その背中を見ると、





(なんやこれ・・・


なんでこんなへんな気持ちになるんや・・・!)






・・・・・それは。




それは、今から思うと、
初めて俺を理解してくれた人がいた喜びと、





・・最後の恋の始まりを伝える、心臓のサインだった。





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