文の頂き物

□クローバー
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「クローバー、あげる」

ウチの幼い居候から差し出された四葉のクローバーに目を丸くした。

「これをどうしろと?」
「ゆんゆん、運とかなさそうだから。あげる」

差し出されたクローバーを受け取った。
特に何かを考えてとった行動でもなかったし、多分それは幼い居候も同じことだろうと思った。
その日、読みかけの本にそのクローバーを挟んだ。



「たく、あの本何処にやった?」

めったに見ない本棚は予想よりも汚くて目的の本が見つけられずにいた。
適当に本を引っ張ると次の瞬間には本が雪崩となって落ちてくる。
散らかしたのは多分、俺と親父なんだろうが。
探すのも飽きてきてふと、足元を見た。

「?」

そこには場違いすぎる四葉のクローバーの押し花。
どうしてそこにあるのか思い出せず、静かに押し花を拾った。
これはいったいなんだっけ?
どうしてこんなものが書斎に?
そこに、庵奈が書斎に来た。

「これ、なんだっけ?」
「それって・・・ケイコクがくれたクローバーじゃない?」
「ケイコクが?」

ああ、そうだ。
あの居候が何の気紛れか差し出した一本のクローバー。
懐かしい思い出に頬が一瞬緩んだ。
あの時は何も感じなかった。
でも、今考えると奴なりの礼だったんじゃないか?

「ホントに・・・おもしれえ奴・・・」


そのクローバーの押し花は遊庵の部屋の隅に静かに飾られるようになったのは、庵奈だけが知っている。  
 
                      END
 

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