シリアス長編創作
□立ち止まる場所
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―夜。
シオンは自分の部屋に帰ろうと、足早に廊下を進んでいた。
そしてふと、足を止めてしまう。
…見慣れた曲がり角。
真っ直ぐ行けば自分の部屋。曲がれば…ディアーナの部屋にと続く。
止めればいいのに、どうしてこんな所で立ち止まってしまうのだろう。
…彼女は今どうしているだろうか。こんな時間だからもちろん寝ているに決まっているのだが。
結局、何をしていても彼女のことを考えてしまう自分が居る。どうしようもないのだ、自分は。
シオンはもう諦めていた。
潰せるはずも無く忘れられるはずも無いだろうこの想い。
だから、もういい。
忘れなくていい。潰さなくていい。
…その想いのまま、彼女の幸せだけを願って。
遠くから、大事に想っていこうと。
彼女が自分に植え付けた全ては、それはそれは大きなものだったのだから。