シリアス長編創作
□もがく思考
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…力が抜けていく。
何をするにも力が抜けていく。
何をしたいのか分からなくて、何をしたらいいのか分からなくて。
願いはたった一つなのに。想いはたった一つなのに。
それなのに、どうしてこんなに…自分がわからなくなるのだろう。
シオンは庭に出た。
自分の花壇を眺め、そっと視線を持ち上げる。
あそこはディアーナの部屋のバルコニー。
今なら彼女は勉強の時間だろう。
あの教科の教授は厳しくて抜け出せないのだと文句を言っていたのを覚えている。
シオンは、これまでなら時間の空く限り花壇の世話にまわしたものだが、今ではそれができなくなっていた。
ここに居ると、ディアーナが来てしまうのだ。
できる限り彼女の姿を見たくはなかった。
見たら、側に行きたくなるから。
側に行ったら触れたくなるから、抱きしめたくなるから。
…際限のない自分の欲求。
でも理性が、それはいけないと叫ぶ。
…耐えろ。少しの間でいい。
彼女がここからいなくなればきっと忘れられるから。
…忘れられる。きっと。
「………。」
…忘れられる。
―――本当にそうだろうか―――
疑問がシオンの心にわだかまる。
…考えたくない結論に、彼は頭を振った。