シリアス長編創作
□悪夢の楔
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『…シオン』
――呼ぶ、声がする。
『シオン、シオン』
振り返ると桜色を纏った少女が駆けて来る。
『シオン』
嬉しそうに手を伸ばして駆けて来る。
「…姫さん。」
シオンも、腕を広げて彼女を呼ぶ。
『シオン』
そして飛び込んでくる彼女を愛しげに抱きしめる。
――ぽたり
「……?」
何かが、流れ落ちる。
―――赤。それは鮮烈な赤。
シオンの手から、ぽたりぽたりと流れ落ちる。
ディアーナの白いドレスが赤く染まっていく。シオンの触れたそこからじわじわと。
広がる色は止まらない。
シオンの瞳が驚愕に見開かれる。
慌てて手を離してももう遅い。
ディアーナの全身が赤黒いものへと変わっていく。
―やがて、彼女は血の海へと沈んだ。