中篇創作
□シリウスVSアーク(?)
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―騎士院の中は普段にも増して騒然としていた。
その中心は、言わずと知れた月光の王子と当院一の天才騎士のにらみ合いである。
「今日の手合わせ、代表は君だってね? ずいぶん強いそうだから、楽しみにしているよ」
「俺も、楽しみですよ。それじゃ、失礼します。」
お互い、笑みを浮かべたやり取り。
むしろ周りに人間の方が緊張を隠せない面持ちである。
「色ボケと問題児の意地の張り合い…。みものね…」
「ア、アクアさん?」
ぽそりと呟いたのは魔法院に在する銀髪の少女。その発言に汗ジトを流しているのは神殿に在する栗色の髪の少女である。
騎士院に在籍する友人の葵の所に、二人そろってやってきたらこういう事態になっていたのだ。
「マリン、アクア。如何する。予定通り、私の部屋の方に行くか?」
不思議な服を纏った(巫女装束というらしい)長身の少女が二人に尋ねる。
「ええと…。」
マリンは口ごもった。
アクアの方はどうやら見る気満々のようだし、葵の方も実は気になっているようだし。
…ここは、やはり残るべきか。
そう思っていると隣で、新緑の騎士であるリュートが深々とため息をついた。
「アーク…頼むから、国際問題に発展させないでくれよ…。」
シリウスは紛れも無く他国の王子。ここは負けてやるべきなのである。
そう、アークに再三諫言をした彼だが、もちろんアークは聞く耳を持たなかった。
天才肌で、派手なことが好きで、何よりシリウスを毛嫌いしているアークのことである。
リュートは長年アークと親友をやっている所為でアークがどんなことを引き起こすつもりなのか身にしみて分かっている。
「さぁ、レディ達。私の雄姿を、しっかりとその胸に刻んでおくんだよ。」
シリウスのその言葉にアクアが眉をしかめた。…葵もだ。
マリンは何だか違う意味ではらはらしてくるのを感じてしまった。
審判が立ち、シリウスとアークが剣を持って対峙する。
「…よろしくお願いします。」
「よろしく。…ま、お手柔らかに頼むよ、天才剣士さん。」
いつもどおりににこやかにさらっと言うシリウスと、『気取ってられるのは今のうちだぜ』と言いたげな笑みを浮かべたアーク。
そんな二人に、周りの者達の緊張感もピークに達しようとしていた。
―――が。