短編創作
□Present for you
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「…はぁ…。もうクリスマスかあ…。」
一人の少女が薄くたちこめた空を見上げて呟いた。
彼女の名前は芽衣。藤原芽衣といって、異世界からやってきた女子高生である。
いきなり見も知らぬ土地に放り出されても、持ち前の明るさで何とか乗り切ってきた芽衣だがやっぱりふと向こうを思い出すことがある。
「もう八ヶ月も経ったんだなー。」
こちらに召喚されたのが春。そして今はもう真冬だ。
「まずったな…。クリスマスまでに還れなきゃプレゼントもらえないじゃない。」
そんなことをぶつぶつと口に出すが、実際の意識は別のところにいっている。
(もう…。クリスマスなんだ…。)
こっちじゃ降臨祭というらしいが、まあ、基本的には同じことだろう。
…もう、そんな時期。あれからずいぶん経った。
(そろそろ、なんだろうな…。あたしがむこうに還ることになるのも)
芽衣は小さく溜息をついた。