短編創作
□言葉の意味
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「シオン、大好きですわ。」
―くらり
思わず机に突っ伏しそうになったシオンは辛うじて踏み止まる。
目の前には紅茶を手に、満面の笑みを浮かべているディアーナ。
「…シオン?」
「…いや、うまいだろ? 特別ブレンドだぜ。」
「ええ、ほんとに。」
彼女は更に一口紅茶を飲んで、微笑む。
そんな彼女を見てシオンは内心溜息をついた。
(…やばいかもな、俺)
初めは、単に『親友の妹』だった。
小さくて、くるくると動き、コロコロ表情を変える。可愛くないと言えば嘘になるがそれは妹分としてのことだと思っていた。
…いつからだろう、彼女を瞳で追うようになったのは。
芽衣達とお菓子を焼いたと言って、おすそわけに来たディアーナに、これ幸いとシオンはとっておきのお茶を出してもてなした。するとディアーナは大喜びして彼に言ったのだ。
『大好き』
そのことに対する自分の反応に彼自身が驚いていた。
自分がこの王女を気にしているという自覚はあるにはあったがまさかこれほどとは思っていなかったのだ。
「俺も焼きがまわったかね…。」
「え? なんですの、シオン。聞こえませんわ。」
可愛らしく首をかしげる彼女に苦笑で応える。
「別に。…それよか姫さん、よかったらさ、これからもちょくちょく茶飲みにくるか?」
俺のレパートリーはこんなもんじゃないぜ、と言う彼にディアーナは目を輝かせる。
「いいんですの? 嬉しい。また来ますわ。」
「ただし、ちゃんと課題は終わらせてこいよ? でないとセイルの雷が落ちるぞ。」
「あう…。はいですわ。」
しゅんとする彼女の頭をぽんぽんとたたいてシオンは笑う。
(さて、どうするか。ま、持久戦になりそうだな)
…そんな風に思いながら。