The turn of the star
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今目の前の唇が紡いだ言葉は果たして現実なのだろうかと、智和は頬をつねりたい気分だった。
一方希美は、ぽかんと口を開けたまま固まっている智和に不思議そうに首を傾けた。
「あの、聞いてますか?智和さん?」
そう言いながら小首を傾げ、上目使いで見上げてくる少女に、智和ははっと我に返る。
「え、あ、だが、あの時他に好きな人がいると頷いて」
「うそやだっ、そこも見てたんですか!?」
真っ赤になって慌てる希美に「ああ」と首を縦に振る智和。
すると、恥ずかしそうに希美は俯いた。
刹那、さらりとこぼれた髪の間から覗いた耳が赤いことに気付く。その姿に、智和はある一つの考えに行き着いた。
「その、お前が好きな人とは、まさか……」
考えてることが当たっているならこんな嬉しいことはないと、智和は勝手に先走り始めた鼓動を抑えるため必死に心を落ち着けようとする。
だが、その予想を肯定するように希美が頷いた為、それは無駄に終わった。
智和の顔がかっと一気に熱を持つ。
ならば、自分達はあの瞬間から両想いだったということか。
そう考えただけで顔から火が出そうな程恥ずかしくなった。
だがそれよりも、喜びに胸が震える。
智和の身体が勝手に動いた。
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