短編小説

□君をさがして
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 昔々あるところに赤いずきんをかぶった女の子がいました。

 赤ずきんはある日、森の奥深くに住んでいる、病気のおばあさんのお見舞いに行くことになりました。

 その途中、一匹の狼と出会いました。

『どこへ行くんだい、赤ずきん』
『病気のおばあさんのお見舞いへ』
『そうか、ならこの先に花畑がある。おばあさんへ花を摘んで持っていくと良い』
『ありがとう、狼さん』
『どう致しまして、可愛い赤ずきん。気をつけておいき』

 狼はそう言って赤ずきんの前から去っていきました。

 それが赤ずきんと狼の初めての出会いでした――。



 とある街の人が行き交う通りにて。

「もし、そこの赤いローブを纏ったお嬢さん。何か落としたようだが」

 不意に聞こえた声にリアは足を止めた。
 辺りを見回しても赤いローブを纏っている人はいない。自分を除いては。

「今立ち止まった貴女だ。寺院までの道のりのメモ紙を落とされたようだ」

 張りのある若い男の声。
 リアは、呼びかける声に後ろを振り向き、そして目を見張った。

 そこに佇んでいたのは、目鼻立ちの良い一人の青年だった。

 すっと通った鼻筋に、男性にしては少し大きめの双眸。その目を細め、緩く笑みを作る表情は優しげなのにどこか艶やか。
 項より長い黒の髪を軽くまとめ、肩から前に流す姿は誰もが振り返る程の美男子だった。

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