10/09の日記

22:47
初‼最遊記の三蔵サマ
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「ごちそーさまでした?」
『お粗末さまでした』
行儀よく手を合わせて言ってくれた悟空君に対してふっと笑みがこぼれた。
「にしてもこれは食いすぎじゃね?」
ちょっと呆れたように言う悟浄さんの視線の先には机一杯に並べられた空の皿。
実は流しにも先に運んだ皿が積み重なっている。
「だってよー、めっちゃくちゃうめぇじゃん」
「にしても限度ってもんがあんだろうよ」
「そう言う悟浄もいつもより食べてましたけどね」
「いい女が作った飯は旨いってことだろ」
ニコニコと口元を拭きながら八戒さんが言えば悟浄さんはニヤリとした顔でこちらにウインクをしてきた。
『こんな風に豪快に食べてもらえると作る方としても嬉しいものですよ』
悟浄さんのウインクにはあえて触れなかったが、自分が作った料理を誉められると素直に嬉しいものである。
実は良くも悪くも有名な三蔵一行に料理を振る舞ったのはまだ数回で、あまりにもお腹が鳴っていた悟空君がかわいそうで自分がやっている移動料理屋に招待したことからこの関係は始まっている。
その後は行く先でたまたま出会えば私の店に4人が来る、と行った感じである。

「あんまりそのバカ猿を甘やかすな
そのうち店の材料全部食われるぞ
ただでさえ今も餌代が余計にかかってん仕方ねぇんだ」
いつものごとく視線は新聞のままで煙草を吸っている三蔵の近くにある灰皿はまだ一本しか吸い殻が見えない。
『それは困りますねぇ』
本当にそうなったら困るのだが、そんなことを言われると思ってなかったので思わず笑いがこぼれた。
「餌代ってなんだよ?大体サンゾーだっていつもより多めに食ってんじゃん?」
「俺の金で何食おうと自由だろうが」
「でもまぁ、ここに来ると三蔵の煙草の数も減ってますしいいことじゃないですか
僕もここの料理は美味しくて好きですよ?」
「へぇ…煙草の数がねー…」
まるで余計なことを言うな、とでも言わんばかりにバサリと新聞が広げられる。
『煙草の数と料理って何か関係があるんですか?』
単純な疑問であった。
「…へぇ、サンゾー様って奥手なの?」
「寄るなエロ河童、バカがうつる」
「んなこと言って〜、恥ずかしがるこt

内容が全然分からなかったがとりあえず傍観していようと思ったところでパンッと乾いた音が響いた。
「人の話も聞けないような耳ならいらねえよな?」
「じょ…冗談だっつの…」
「三蔵、銃を撃つのは勝手ですが備品は壊さないでくださいね。」
「エロ河童が避けなきゃ問題ねぇ」
チャキリとリボルバーが回る音がする。
「んんん…もう食えねぇ…」
『あらあら…』
同じく傍観しているだけかと思った悟空君は幸せそうな顔で机の上に頭を乗せて寝ている
「んのバカ猿がっ…」
「まぁまぁ、いいじゃないですか
悟浄、悟空を運ぶの手伝ってくださいね」
「あーい」
いつものごとく、三蔵はどこから出したのか分からないハリセンで悟空君を叩き起こそうとして八戒さんに止められていた。
『なんなら悟空君、私のふとんで寝かせても構いませんよ?』
「いえいえ、僕達もこの街に何泊かしようと思っていたのですでに部屋をとってるんです。
それにまだ片付けもありますから、これ以上お世話になる訳にはいきませんよ」
『気にしなくてもいいのに』
「それなら少しの間三蔵を任せてもいいですか?
僕達はまだ買い出しがあるので、三蔵一人置いておく訳にはいかないんですよ。
しばらくここにいてくださいね、三蔵
多分夜には僕達の用事も終わると思うので」
「…」
『私は別に構わないんですが…』
ぶすっとしたままの三蔵は何も言わないので私はとりあえず承諾すると小声で、世話になる と返ってきた。
「何か必要なものありますか?ついでなんで買ってきますよ?」
『大丈夫ですよ、お気遣いありがとうございます。』
「遠慮しなくてもいいのよ?
悟浄さん、今なら何でも買ってあげちゃうよ?」
「赤のマルボロ」
「クソ坊主にじゃねーよ」
「では、しばらくお願いします」

悟浄さんは悟空君を背中に背負って八戒さんと歩いて行った。
『ふふっ…置いていかれちゃいましたね?』
「別に、静かになって逆にせーせーしたとこだ」
『何か飲みますか?』
「…コーヒーを頼む」
『分かりました。ちょっと待ってくださいね。
もうお皿とかも片付けちゃいますから』
「あぁ」
『前会ってから大分時間が空いてましたが、怪我とかしてないですか?』
「鬱陶しい程元気で時々一人減らしたい位だ」
すぐ近くにある炊事場から三蔵の煙草の煙が見える。
『皆さんおかわり無さそうでよかったです』
「お前は…」
『私ですか?私も特に何もありませんでしたよ、でもそうですね…お得意様が増えた位ですかね?』
「お得意様?」
『妖怪の方なんですが、とても気さくな方々ですよ』
「大丈夫なのか?」
『えぇ
お待たせしました』
コトリと三蔵の前に専用のコーヒーカップを置く
「あの話は考えてくれたか」
『また、その話ですか?
前も言ったじゃないですか』
「前も行ったが女一人で旅をするなんてバカなことをするな」
『大丈夫です、これでも私強いんですよ?』
「そういう事じゃない」
『それに置いて行ったのは貴方が先ですから、置いていかれた私が何をしようと勝手なはずですよ?』
「…」
『ほら都合が悪くなると黙って眉間に皺が寄る癖、やっぱり抜けなくなっちゃったじゃないですか
あれだけ注意するようにいったのに』
ぐいっと眉間の皺を伸ばす真似をすると、嫌そうな顔をして手を取られた。
「絶対に危険な場所には行くなよ」
暗紫の瞳に射ぬかれては反論ができない。
『妥協点ですかねぇ』
すっと手を引いて片付けに戻る。
『さて、三蔵様
今度のリクエストはありますか?』
三蔵に背を向けたまま声をかける。
「…何でもいい」
『何でもいいですか、一番困る回答ですね
悟空君達なら迷わずお肉ですが、どうしましょう?』
「バカ猿達の事なら気にするな
…それに何でもうまい」
『え?』
不意に言われた一言に聞き返してしまう。
「何でもない」
『そうですか、じゃあ今度はとびっきり美味しいデザートでもつけましょうか』
「…好きにしろ」
ちらりと目線だけを三蔵に向ければ、不意に視線がかち合ったのが気まずかったのかすぐに視線をそらされた。
『そうですね、好きにします。』
なんとなくほんわりとした空気のままお皿を片付ける音だけが響いた。

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