BOOK08

□C.お前のことなら何でも知ってる
1ページ/1ページ

※17山→→→→→←獄
※他高パロ
※ストーカー山×隣町の高校生徒獄
※山本がリアルストーカーなので注意



視線を感じる。

しかし、それは気持ち悪いものではなく、熱っぽい視線で、奇しくも俺はそのストーカーさんに恋している。

ストーカーの正体は隣町の野球部エース、山本武。



去年の春だった。
いつも同じ汽車に乗っている奴に告白されたのは。

そいつの告白を俺は断った。
知らない相手とは付き合えない、と。
俺をよく知ってもいない相手とは付き合えない、と。

するとソイツは一瞬悩んでから、閃いたような顔をして、笑顔を見せた。


「俺、今日から君のストーカーになるからっ!!」


それが山本武だった。


最初は、ふざけんな、気持ち悪い。と思ったけれど、
視線が気になり初めた頃、胸が熱く高鳴るのを感じた。

変態か俺は、と思いながらも、止められなかった。






そんなある日のことだった。

一通の電話がかかってきた。
非通知で、俺は訝りながらも電話に出た。


「もしもし…」

『もしもし?山本武。あんたのストーカーなんだけど、覚えてるか?』


山本……?

しかし俺は山本にケー番なんて、教えてない……。
何で……。


『もう、お前のことなら何でも知ってるよ…。名前は獄寺隼人、血液型はB型、誕生日は9月9日…乙女座なんだね、可愛い』


クスクスと笑う受話器越の声に背筋が凍ったのは悪寒で、気持ち悪い、と思った。

けれど手が震えて、しかも受話器すら耳から離せない。


『体…洗う時は右腕から洗うよね、いつも………見てるよ……』

「っ!」

『ねえ…声、聞かせてよ』


ハァ、ハァと荒い息が受話器から漏れてきて、肩まで震えたと同時に勢いよく受話器を乱暴に置いて、電話を切った。


プルルルルル…
プルルルルル…

鳴り続く電話を投げ捨てて、耳を塞いで座り込む。

自分を抱き締めるように、自分の肩を抱いて震える。

ピーンポーン…

インターホンが鳴って、肩を跳ねさせるけど、客が来たと思ったら酷く安心した。
それは、まだ電話のベルが鳴ってたから、山本ではないと脳内で置き換えていたからかもしれない。


「たっ、たすけ…っ!」


扉を開けて、絶望した。
全身が凍りついて、涙が溢れ出す。

そこには耳にケータイをあてながら、薄く微笑む山本が立っていた。


「あ、あ…」

「獄寺…」


叫ぼうと開いた俺の口を大きな手で塞いだ山本は、俺を家の中に押しやって、廊下に押し倒した。


「大丈夫、優しくするから」


口を塞がれたまま、シャツのボタンが一つ一つ外されていく。

ギィィと音を立てて、閉まっていく扉を、涙で滲む視界で見つめた。


「俺、獄寺のこと、よく知ってるだろう…?だから、もう獄寺は俺のモノだよ」


バタンと扉が完全に閉まるのを聞いて、空白になる心で、顔を横に向け、床へと視線を落とし涙を流した。

山本が、もう抵抗する力も無くした俺を見て、口を塞いでいた手を退けて、俺の唇に優しく唇を寄せる。

残酷なくらい優しくて、甘いキスだった。


「これからは、ずっと一緒な」


もう何も分からない。
脳内は真っ白、心は何かぽっかり穴が空いたように虚しくて。


横を向いたままの顔を、真っ直ぐに戻すと山本がいた。

目の前で優しく眸を細めて微笑む山本が愛しく思えた。

俺は…………コイツが、好きなのか。

あれ?でもさっきの恐いストーカーは?


「ストーカーは……?」

「もういないよ獄寺。だって俺は獄寺の恋人だから」


髪に優しくキスをされる。

そうか、もう恐くない。
だって、山本がいる。

山本が、山本がずっと傍にいる……。


「山本…」

「獄寺…」


俺は山本の首の後ろで手を交差させて、俺の髪に顔を埋める山本を抱き締めた。

山本の零れたような小さな笑い声が、俺の鼓膜を揺らした。



End

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ