BOOK08
□C.お前のことなら何でも知ってる
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※17山→→→→→←獄
※他高パロ
※ストーカー山×隣町の高校生徒獄
※山本がリアルストーカーなので注意
視線を感じる。
しかし、それは気持ち悪いものではなく、熱っぽい視線で、奇しくも俺はそのストーカーさんに恋している。
ストーカーの正体は隣町の野球部エース、山本武。
去年の春だった。
いつも同じ汽車に乗っている奴に告白されたのは。
そいつの告白を俺は断った。
知らない相手とは付き合えない、と。
俺をよく知ってもいない相手とは付き合えない、と。
するとソイツは一瞬悩んでから、閃いたような顔をして、笑顔を見せた。
「俺、今日から君のストーカーになるからっ!!」
それが山本武だった。
最初は、ふざけんな、気持ち悪い。と思ったけれど、
視線が気になり初めた頃、胸が熱く高鳴るのを感じた。
変態か俺は、と思いながらも、止められなかった。
そんなある日のことだった。
一通の電話がかかってきた。
非通知で、俺は訝りながらも電話に出た。
「もしもし…」
『もしもし?山本武。あんたのストーカーなんだけど、覚えてるか?』
山本……?
しかし俺は山本にケー番なんて、教えてない……。
何で……。
『もう、お前のことなら何でも知ってるよ…。名前は獄寺隼人、血液型はB型、誕生日は9月9日…乙女座なんだね、可愛い』
クスクスと笑う受話器越の声に背筋が凍ったのは悪寒で、気持ち悪い、と思った。
けれど手が震えて、しかも受話器すら耳から離せない。
『体…洗う時は右腕から洗うよね、いつも………見てるよ……』
「っ!」
『ねえ…声、聞かせてよ』
ハァ、ハァと荒い息が受話器から漏れてきて、肩まで震えたと同時に勢いよく受話器を乱暴に置いて、電話を切った。
プルルルルル…
プルルルルル…
鳴り続く電話を投げ捨てて、耳を塞いで座り込む。
自分を抱き締めるように、自分の肩を抱いて震える。
ピーンポーン…
インターホンが鳴って、肩を跳ねさせるけど、客が来たと思ったら酷く安心した。
それは、まだ電話のベルが鳴ってたから、山本ではないと脳内で置き換えていたからかもしれない。
「たっ、たすけ…っ!」
扉を開けて、絶望した。
全身が凍りついて、涙が溢れ出す。
そこには耳にケータイをあてながら、薄く微笑む山本が立っていた。
「あ、あ…」
「獄寺…」
叫ぼうと開いた俺の口を大きな手で塞いだ山本は、俺を家の中に押しやって、廊下に押し倒した。
「大丈夫、優しくするから」
口を塞がれたまま、シャツのボタンが一つ一つ外されていく。
ギィィと音を立てて、閉まっていく扉を、涙で滲む視界で見つめた。
「俺、獄寺のこと、よく知ってるだろう…?だから、もう獄寺は俺のモノだよ」
バタンと扉が完全に閉まるのを聞いて、空白になる心で、顔を横に向け、床へと視線を落とし涙を流した。
山本が、もう抵抗する力も無くした俺を見て、口を塞いでいた手を退けて、俺の唇に優しく唇を寄せる。
残酷なくらい優しくて、甘いキスだった。
「これからは、ずっと一緒な」
もう何も分からない。
脳内は真っ白、心は何かぽっかり穴が空いたように虚しくて。
横を向いたままの顔を、真っ直ぐに戻すと山本がいた。
目の前で優しく眸を細めて微笑む山本が愛しく思えた。
俺は…………コイツが、好きなのか。
あれ?でもさっきの恐いストーカーは?
「ストーカーは……?」
「もういないよ獄寺。だって俺は獄寺の恋人だから」
髪に優しくキスをされる。
そうか、もう恐くない。
だって、山本がいる。
山本が、山本がずっと傍にいる……。
「山本…」
「獄寺…」
俺は山本の首の後ろで手を交差させて、俺の髪に顔を埋める山本を抱き締めた。
山本の零れたような小さな笑い声が、俺の鼓膜を揺らした。
End