BOOK08
□@.そんなに嫉妬して欲しかった?
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「なあ、お前いい加減にしろよ」
全く意味が分からない。
いつものように十代目と登校していた筈なのに、いきなり山本が俺の腕を引っ張って公園の雑木林の中へと連れて来られた。
固い樹木に背中を乱暴に押し付けられて痛みが走って、山本を睨み上げると、山本の表情には怒りが滲み出ていた。
何で怒っているのか、俺にはさっぱり分からない。
「何がだよ…」
「とぼける気か?もう毎日毎日…我慢の限界なんだよ獄寺あ」
じり、と山本が地面を擦って俺に近づいてくる。
後ろに下がりたくても、木が邪魔して下がれない。
「何で、そんな怒ってんだよ…」
山本が俺の顔の横に手を付いて、行く手を阻む。
もう逃げれないと、さ迷わせていた視線を真っ直ぐ山本に合わせた。
「お前が…、お前がツナにずっとベッタリだからだろ!?」
――――は?
一瞬耳を疑った。
十代目に俺がベッタリなのは今に始まったことではない。
「はあ?そんなの当たり前じゃねえか、それに前からだろ?」
「だから前から気にくわなかったんだよ……っ!」
呆れた。
こんな嫉妬深い奴だとは思わなかった。
けれど、そんなどうしようもないバカに呆れたんじゃなくて、束縛を嬉しいと思っている俺に呆れた。
だって、いつもヘラヘラして何も執着なさそうなコイツが、こんな裏っ返したように豹変するもんだから。
「それとも何?そんなに俺に嫉妬して欲しかったのか?」
鋭く光る眸は、俺を捕らえる。
殺し屋の眸だった。
「ああ、そうだな…。俺だけが嫉妬してんのは公平(フェア)じゃねえだろ?」
お前に纏わりつく女共に毎日嫉妬するのはあまりにも不公平だと常々思っていた。
だから十代目には失礼に値するが、嫉妬してくれたことへの嬉しさを隠しきれなかった。
「え…それって……」
山本の襟元を掴んで、とぼけた顔の山本の唇を奪う。
お前は俺のもの。
誰にも渡さねぇ。
独占欲が深いのはお互い様。
End