BOOK05

□C.真っ直ぐにしか、愛せない
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俺は野球でも投げる時は直球、ストレートが得意だ。
ここ一番って時にも必ずストレートで勝負する。自信があるから。
でも、恋のことになるとそういうわけにはいかない。

そう、獄寺のことと関しては……


「げっ、山本」


ツナの家に行く途中でばったり会って、眉間にこれでもかってくらい皺を寄せられる。
いくら俺だって笑顔がひきつる。


「そんな嫌そうな顔すんなよ。俺でもショック受けるんだぜ?」

「お前のその軽はずみな言葉が信用できねーんだよ。ヘラヘラしやがって……」


顔と言動があってねーんだよ、と舌打ちをされる。
更に気にくわないと追い討ちまでかけられた。

堂々と言いたくないけど、俺は獄寺に嫌われてる。最初からずっと。
そりゃさ、獄寺の人生を辿っていけばさ、俺みたいな平凡な人生を平和に生きてる奴なんか嫌だと思うよ。でも、それって俺だけじゃなくね?
つツナだって、十代目になる前はそうだったと思うんだけどなあ…。

だから獄寺に好きって気持ちを伝える時は、変化球でさえ投げられなくて、いっつもヘロヘロの弱気なスローボールだ。


「なあ獄寺」

「なんだよ?」


面倒そうに俺を振り向く。
不機嫌な顔。早く十代目のところに行きたい、と顔に書いてあるよう。


「俺のこと、そんなに嫌い?」


ほら、また弱気なスローボール。

獄寺は、はあ?と眉を更にひそめて、俺を睨み付ける。
そんな表情見たら、もう顔上げられなくて、俯く。


「……そんな顔するなよ」

「え……?」

「そんな情けない顔すんなって言ったんだ!」


顔を上げると、真っ直ぐな眸をした獄寺が、俺を真っ直ぐに見つめてくれていた。


「俺はお前のこと気にくわない。ヘラヘラして何でもできる奴なんて本当に気にくわねえ」

「……」

「でも、それに努力や苦難がないなんて思わねえし……あー!だから、上手く言えねえけど、嫌いではねえよ」


お前のこと、
そう言って、顔を真っ赤にする獄寺に、俺は泣きそうになった。

獄寺は獄寺なりに俺のこと認めてくれていて、こんなにも真っ直ぐに答えをくれた。
それだけで、もう十分すぎて、


「そっか…ありがとな獄寺」


俺もちょっと、臆病風そろそろ振り切って、思いっきりのストレートぶつけてみようかな。


「俺も、獄寺のこと好きだぜ!」

「だから!その軽はずみな言葉を慎めっていってんだよ!あと、もってなんだ!も、って!!」


本気だよ。軽はずみなんかじゃない。
それを真剣にストレートで伝える程には、まだ臆病風も抜けきらないから、取り敢えず……少しずつ信じてもらえるように投げ続けるしかないかな。
更に真っ赤になる獄寺の肩をいつもの感じで抱いて、自然と口角が上がるのを感じた。

俺の渾身のストレート、覚悟しとけよ、獄寺隼人!
 

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