BOOK05

□A.艶やかな唇に紅い舌
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※24山獄




時計の秒針が煩い。

広いこの部屋。
1ヶ月経ったからといって慣れる訳ない。



そう、獄寺が出張でイタリアに行ってしまって1ヶ月。

そう、あの日から1ヶ月。

そして今日、獄寺が帰ってくる……。








さっきからずっと狭い部屋をウロウロしては爪を噛んでる。


怪我してないか、
抗争ではないのに、そんな野蛮な任務でもないのに、思う。

浮気とか、してないよな…?
ただ同盟マフィアとの交流を関しての家庭訪問みてぇなもんだから余計に尚更、心配だよ。

信じてない訳じゃないけど、やっぱどうしようもなく不安になるんだ。

(襲われてたりとかしたら……)


「っくそ!」


想像して思わず近くにあった扉を蹴る。

(穏やかじゃねーな……)

なんて、自分の面が一番穏やかじゃないのは分かっている。






親指の爪をカリ、と噛んだ。

その時、ギイィと扉が開く、待ちわびた音が響いた。

俺が寝ていると思ったのか(だってもう朝方の5:00)、静かにそっと開いたような音だった。


「獄寺っ!」

「うおっ!?山本……っっ」


狭い廊下走って、玄関に立って後ろ手に扉を閉めている獄寺に飛び付いた。

ぎゅう、って抱き締めると、獄寺は背中をゆっくり撫でてくれて、ただいま。と穏やかな声で呟いた。


「んっ……!」


顎を掴んで、上を向かせてから、唇を塞ぐと、獄寺の手が背中に縋る。

獄寺の顎を掴んだまま、角度を変えて、舌を捩じ込ませて、深く深くキスをする。


頭がくらくらなりそうだ……。


「っはぁ、はあ……あっ……」

「おかえり、獄寺」


酸素を取り込もうと荒く息を吸っては、二酸化炭素を吐きだそうと荒く息を吐く、獄寺の眸はとろんとして、蕩けそうだった。


思わず生唾を飲み下す。




獄寺の無自覚の誘惑は続いて、

どちらか分からない唾液が獄寺の口端から伝う、
艶めいた唇の下端を赤い舌で辿りながら、その唾液を舐め取った。


(エロすぎる……)


てらてらと光る唇はもう艶かしい。

チラチラ覗く赤い舌はエロくて可愛い。



……つーか


「もう我慢の限界」


へ?
と目を丸くする獄寺の手首を掴んで、壁に押し付けて、また唇を重ねた。


ふ、と
美味そうな好物を目にして我慢できる奴がいない原理、よく身に沁みて分かった気がした。



End

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