BOOK04

□19.痛い跡
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上半身を起き上がらせ、重い頭に、思わず側頭を押さえた。
何故か腰も痛くて首を傾げる。


ふと目を落とせば、記憶は広がる。

しわくちゃのシーツ。
昨日俺はこの白の海に溺れた。

それが乱暴に被せてあるだけのベッドは、いつもより古ぼけて見えた。
昨日俺はベッドが軋む音を聞いた。


ふとシーツを伸ばそうと手をかければ、
ガビガビにこびりついた何か。
首を傾げる。

知っている。
これは、この白濁とした塊は―――


途端に鈍痛が酷く俺の頭に響く。

思わず苦痛の声を漏らして、ベッドから下りればガクガクと笑う膝。
あれ?おかしいな。そう思った時にはカーペットに膝は付いていた。

内腿を伝うは白濁の…それ。


「う、あ!ああああ!!!」


そうだ、思い出した。
昨日俺は無理矢理山本に抱かれたのだ。

嫌がる俺を押さえつけて、同性の俺を何度も犯した。

山本は少なくとも、あんなに酷い男ではない。
だから夢である可能性は高い。


顔を覆おうとした、その手首には、大きな手の跡。
赤くうっ血したそこは、昨日の山本の乱暴で熱い、掌の形を型どっていた。


目を見開き、叫びは喉を通らない。
ヒュッと呑み込んだその息と同時に玄関の前で誰かが止まった靴音がした。


震える、その脳裏に昨日の残虐な光景を思い浮かべた。

(さあ、今日はどこに俺の証を残して欲しい……?)
キスマークだけでは足りない。と弱い目をした強い男は呟いた。



End

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