BOOK04

□@.授業中こそ保健室
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獄寺は頭がいい。
獄寺曰く、だから授業をサボる。
んでもって、サボり場所は大抵屋上か非常階段。
だけど、寒さの厳しくなってきたこの時期はほぼほぼの確率で保健室だ。


「腹が痛いので保健室に行ってきます」

「またか、獄寺……」


獄寺は律儀に嘘を吐かない。
言い訳はしない男らしい性格だ。
先生は呆れるけど、俺は妙に感心してしまう。

俺はというと……


「すみませーん、トイレ行ってきてもいいっすかー?」


数分後に、嘘を吐く。

因みに獄寺が保健室に行く度の恒例行事みたいになってるので、先生も最早文句を言う気も起きないようで。
俺は席を立って足早に保健室に向かった。


「失礼しまーす」

「おーおー、毎度ご苦労なこって」


隼人ならもう寝てやがるぜ。
と、文句をブツブツ呟き始めるシャマル先生。
隼人なんて軽々しく呼ぶこのオッサンにピリと電気が走る。

その小さなイラつきにも気づくシャマル先生はからかうようにクツクツ笑い始めた。


「お前も飽きねえなあ…」

「シャマル先生への牽制のことっすか?」

「だーかーら、俺は男に興味ねえっつーの」


呆れるシャマル先生。
だって、シャマル先生獄寺のことは好きじゃないか。
獄寺だってシャマル先生のことが好きだ。あれ、これって両想いってやつじゃ…?なんて考えは直ぐに抹消。


「お前さあ、何で隼人なわけ?」

「へ…?」

「お前なら可愛い子ちゃんなんて選り取り緑じゃねえか。あー羨ましいっ!」


シャマル先生が狂ったように頭を抱えて叫んだ。
そんな叫んだら獄寺が起きるじゃん。
いや、つーか……


「何言ってるんすか?俺は獄寺のこと友達として心配してきてるだけで、ツナとかと比べるならまだしも女子って……」

「いやいやいや!ちょっと待て、」

「ん?」

「はあ、お前マジか」


シャマル先生はまたケラケラと笑い始めて、ふと真剣な顔をした。
思わず俺でも後退りしそうなくらい。


「じゃあ隼人は渡せねえなあ」


お前みたいな奴には。
と、キッパリそう言った。

なんであんたに言われなくちゃなんねーんだ。
しかも獄寺はあんたのじゃない。


「俺だって、獄寺をあんたみたいなオッサンに渡さない…」

「おっ、いいねえ。無自覚でそんだけくりゃあ…天性だな、確かに」


リボーンの言う通り、どっちに転ぶかも分からねえな。と、シャマル先生はブツブツ言った後ニヤリと笑った。


「ほらほら邪魔者はとっとと退散しろー。後で数学の先生にチクるぞ」

「チッ、ひきょーだ」

「何とでも、あと俺はそんなにオッサンじゃねーぞー」


渋々と帰る山本を勝ち誇った笑みで見送った後、いやーこれは面白い。とシャマルはまたクツクツと笑いが込み上げてきた。
久々に饒舌になったなー、と自分でも思う。

(しかしアイツ…どう考えたって隼人に惚れてるだろ。直ぐにあんな殺気出しやがって……)
白衣を捲って、粟立つ肌を見て、こりゃあ天性の殺し屋だ、とクツクツまた笑う。

あー面倒な奴に惚れられたなあ隼人も。あれは一生付き纏われるぞ。とニヤニヤと獄寺が寝ているベッドに近づく。
無自覚な山本をどう毎日からかおうか、考えるだけで笑いが止まりそうにない。

これからが楽しみだ、と呑気に寝息をたてている当人である獄寺を柔らかく見つめるシャマルは、まるで獄寺の保護者のようだなと自分で思い嫌気がさすのだった。


一方、教室に戻った山本は…
(あー、獄寺とシャマル先生が恋人だったらどうしよう!俺勝ち目ねーよ!)
えっ、何に勝つんだ?と、悶々として授業を受けることになるのだった。

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