BOOK04

□H.煙草味の甘いキスで
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静かに唇を合わせて、眸を閉じて、この幸せな時間を十分に味わってから、唇をゆっくりと離す。


「あれ?」


ふ、と今更だと言えば今更なんだけど疑問に思った。

獄寺が何だよ、と眉を潜める。

俺はテーブルの上に置いてあった灰皿を見た。


(1、2、3、4…やっぱり……)


煙草の吸殻が4本も。
ということは、獄寺が俺ん家に来てからの短時間で4本吸ったことになる。

でも、キスの味は煙草の苦さもあったけどすっげえ甘かった。


「獄寺飴舐めてた?」

「いや、別に…んなの舐めてねえけど」


そういえば、いつもキスの時は甘い味がしてたよなぁ…。

ということは、獄寺が甘いのか?


「なあ、獄寺って砂糖か何かが常に分泌されてんの?」

「そんな化物みてえな体の奴いるか!めでてえバカ頭が!!」


頭をゴツンて殴られた。
痛い…。


そして獄寺は舌打ちして、煙草を咥えて火を点けた。


漂う甘い匂い。

そういえば、煙草の匂いも甘いような…煙たく噎せ返って肺が痛くなるような感じのヤツじゃないような……。

前まではそうだった気がするけど…。


「もしかして獄寺……」

「ああ?今度は何だよ」

「煙草…変えた?」


瞬間、獄寺の顔が真っ赤になる。

そしてゲホゲホと何故か噎せた。

おいおい大丈夫かよ、と苦しそうに咳き込む背中を擦る。


「べ、べべべ別に!テメェの為とかじゃねえからなっ!!」


耳まで真っ赤になったまま獄寺が俺を振り返って叫ぶ。

その瞬間、頭の中のパズルのピースが組み合わさった気がした。


「もしかして…俺が噎せてたから…?」


確か、苦しくて、一時期獄寺が煙草吸うときは獄寺から離れてた…。

もしかして…それが寂しかった?


「ち、違う!!」


うわあぁ、可愛い…。

俺まで耳まで熱くなる。


「ただ、その…なんだ。気分転換だ!気分転換!」

「うんうん、そうなのな。何ていう銘柄の煙草なの?」

「アーク・ロイヤル・スイートって言ってバニラの香りがキツいんだ…ってお前俺の話聞いてんのか!?」


バニラかあ。
すっげえ獄寺に合ってるのな。

そう言って、また甘い煙草の味がする唇を舌で辿って、堪らないとばかりに開いた口内に舌を忍び込ませた。



End

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