BOOK04
□B.きみの好きなやり方でキスして
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14山→獄
目の前には唇をすぼめた山本。
ああ、俺は何てバカなことをしてしまったんだろう。
頭を抱えても、もう遅い。
“理科と数学で100点だったら俺がご褒美やるよ。”
あんなこと言った過去の俺を恨んだ。
だって、絶対取れねぇと思ったんだ。
コイツの苦手としてる理数系で満点なんて地球が爆発してもありえねぇと思ってた。
ついでに言うと、ご褒美がこんなバカなことだとは思わなかった。
もっと中学生らしく、駅前のラーメン奢るだとか、うめえ棒全種類買い占めるとか。
そんなことだと思ってたのに……!
“獄寺からのキスが欲しい……”
バカか!!
バカなのか!?
いや、それはわかってた。
けどな!!
こう、なんつーんだ。
常識ってもんがあるだろう!!
いくらバカでも!!
「獄寺ー、早くー」
山本が目を開ける。
ワクワクしてるような無邪気、というより寧ろ俺には心なしか悪意が見える。
「だああ!!目ぇ開けるなって言っただろバカ!」
「だって遅いんだもん。逃げ帰ったかと思ったぜ?」
「っ!誰が逃げるか!!」
ハッ、しまった。
気付いた時にはもう遅い。
目の前には、ムカつくくらい満面の笑みのにこにこ顔の山本。
「ん、そうだよな。じゃあほら、ちゅー」
また山本が唇をすぼめる。
ちくしょうムカつく。
「っだいたいなぁ……お前、男なんかにキスされるのが褒美でいいのかよ」
普通キモいだろ。
男同士だぜ?
山本は目をぱちりと開けた。
「獄寺が好きだから、獄寺からのキスが欲しいんじゃん」
は……?
目を丸くして山本を見る。
今……何て言った……?
「褒美の内容な、好きな奴からのキスが欲しい」
山本が俺の頬を包む。
ひどく優しく、熱の込み上げる頬を撫でた後に包んだ。
「お前のやり方、教えて」
「…………」
何で、こんな。
「……したこと、ねえけど……」
「え……」
ちゅ、
驚いたように目を見開いた山本の唇に、唇を寄せた。
そして離して、山本から真っ赤になる顔を逸らした。
「目、閉じろって言ったろ、バカ…」
テメェからキスしろって言ったくせに真っ赤になるお前はバカだけど
こんな一回のバカげた告白でときめいた俺はもっとバカ。
こんな俺を好きになったお前もバカだけど
マジで好きになっちまった俺は、もっともっとバカ。
ホントに山本ごときに情けねぇ。
そう思いながら、もう一回、山本の唇に自分の唇を寄せた。
End