BOOK03

□C.ひとりにしてと震えるきみの、震える手を離すものかと。
1ページ/1ページ

※本誌ちょいネタばれ
※山本復活記念



ずっと、永い夢を見ていた。

崩れそうな友人と、それを崩すものかと必死に支える恋人。

その恋人が一番脆くて崩れそうで、俺はその恋人を近くで支えてやりたいのに、体が動かない。


泣きそうな顔したツナがいつもよりも無理して、頑張っている。

獄寺が、いつもより無理して笑ってる。

俺には分かるよ。
獄寺…。


目が覚めた時、大切な物を守りに行かなくちゃ、と思ったら、やっと体が動いた。





「山本…」


随分長い間待たせたよな。
ごめんな、ツナ、獄寺。













戦いを終えて、一時の休息の時。

獄寺とゆっくり話をする暇もないまま、久しぶりに動かした体に疲れを覚えて、眠ってしまった。




どれくらい寝ていたのだろうか。

ふ、と眸を開けると、まだ辺りは暗かったから、まだそんなに寝ていないのだと気づく。

取りあえず、体を起こし、周りを見渡すと獄寺がいないことに気がついた。


「獄寺…?」


こんな夜中に一人でどこ行ったんだ…?

不安に走る心臓を、手で胸を抑えることで静めようとしながら、俺は立ち上がってみた。


「獄寺……」


暗闇にやっと慣れてきた目が、やっと気配を消していた獄寺を捉えた。

それに少し安堵をして、獄寺の傍に近づいた。

獄寺がびくりと体を震わせる。


「……来るなっ!」


自分の膝に顔を埋めている獄寺の表情は見えなくて、ただ震えていて。


獄寺の髪に触れると、パシンと手を払われて、その俺の手を払った手が引っ込む前に俺はその手を掴んだ。


「獄寺…」

「離せ、離してくれ……。頼むから…」


ああ、もう。

俺は獄寺を上から覆い被さるように、すっぽりと抱き締めていた。

震える手は離さない。
離せなかった。

こんな俺の手より小さな手で、ツナを守ってきたんだろ?


きっと自分の弱音なんて押し込んで、一人で不安で押し潰されそうでも、ぶつける相手なんていなかったんだろ?

それは、もうずっと、俺の役割だから。


「獄寺、獄寺」


ごめん、とか、よく頑張ったのな、とか、色々言いたい言葉はあったんだけど。


「ただいま。俺はここにいるから、もう大丈夫だから……安心していいぜ…」


獄寺が俺の服をぎゅって握り締めて、胸に顔を埋めた。

胸の辺りが妙に暖かく湿っぽくなって、獄寺を抱きしめる腕に俄然力が入った。


ああ、ずっと、長く感じてなかった温もりに、体の力が緊張が、一瞬解れる。


「……おせえんだよ…バカ……」


小さく、おかえり、って声が心にじわじわと染み込んでいくのを感じた。



End

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ