BOOK03

□B.放課後の教室は少し寒くて、きみの手はこんなにも温かい。
1ページ/1ページ




手が暖かい人は、心が冷たい人だと
手が冷たい人は、心が暖かい人だと

誰かが言っていた。

迷信みたいなもんだけど、俺の体温はいつも高くて、手は暖かいから、やはり気になってしまった。







「獄寺ー?」


部活終わりの教室は暖房も切られているから、いつものように寒い。

けれど机に俯せて不機嫌そうな顔だけど、いつも待っていてくれる獄寺。

優しいよな、と思う。
愛しいとも。


「遅い…」

「悪い、監督に捕まっちゃって…」

「どーせ野球バカの癖に余所見なんてしてたから怒られてたんだろ」


バーカ、と、寒さで鼻先と頬を赤くして、楽しそうに微笑む獄寺。

まあ、ぶっちゃけそうなんだけど。
信用してない訳じゃないけれど、獄寺をどうしても確認してしまって…って。


「もしかして……俺のこと見ててくれてた……?」


一瞬の沈黙の後、獄寺の顔に火が点いた様に真っ赤になる。

うわあ、うわぁ!!
やべえどうしよ……。

……嬉しすぎる。


「ばっ、ばばばば!ばか野郎っ!お前なんかちーーっとも見てねえ!視界にすら入れてねえっ!!」

「うん、うん!そうなのな獄寺、ありがとな!」


獄寺が顔を真っ赤にしたまま、言葉に詰まる。

分かりやすすぎなのな。


「ーーっ。チッ…寒いんだよ、とっとと帰るぞ!」

「おう!」


あ、もう誰も校舎には残ってないだろうし……玄関まで、いいかな…?

獄寺の指先に手を伸ばして、掴んだ。


……冷たい。


「てめっ」

「まあまあ、もう誰もいねえし、玄関までならいいだろ?」


獄寺は渋々という顔をしながらも、少しだけ握り返してくれた。

……やっぱ冷たい。


「手、冷たいのな…。暖めてやるから」


手が暖かい人は、心が冷たい人だと
手が冷たい人は、心が暖かい人だと

誰かが言っていた。
迷信かと思っていた。


……けれど、
あながち嘘じゃないかも。



冷たい掌を握りしめながら、ふとそんなことを思った。



End

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ