BOOK03

□C.照れ屋もここまでくると病気
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17時10分前に獄寺君は家を訪ねて来た。獄寺君をまあまあと母に任せて、直ぐに浴衣を着付けてもらった。
あのー、十代目ぇ、これはなんですか?って眸で訴えてくるけど気にしないふりをした。

数分後、母さんが綺麗ねーと絶賛してキャッキャッしているのも頷ける程、白の麻の浴衣を着た獄寺君がいた。
(山本、鼻血間違いなしだなぁ……)
よく似合ってるし、すごく、うん。綺麗だ。


「山本は石段のとこで先に待ってると思うからさ。俺はランボとかの支度させないといけないし…。先に山本と合流しててくれない?」

「なっ、何で俺が山本と…!なら俺も手伝いますよ十代目を!」

「獄寺君」

「は…はい」

「十代目命令」


ニコッと笑うと、悄々と返事をして、渋々と家を出ていった。
履き慣れない下駄を履いているせいか何となく足取りが覚束ないし、カラカラと元気がない獄寺君。
(あれ?両想いなんだよね?)と思ってしまうのはこういう瞬間だ。
本当に素直になれないんだなあ…。

待ち合わせの場所に獄寺君が到着した時、まだ17時30分にも関わらず山本が神社の石段に腰を下ろして待っていた。何だか雰囲気が堅いような…。


「よお山本。迎えに来てやったぞ」

「っ、おう!獄で…」


首が取れるんじゃないかって位の勢いで顔を上げた山本が固まる。
そして直ぐに赤面した。


「な、何だよその顔!そんなに変かよ…?」

「いや……」


山本が鼻を覆うように押さえる。
(やっぱり鼻血出たのか)
その山本の様子を見て、何を思ったのか獄寺君の顔が怪訝そうに歪んでから悲愴なものになっていく。


「っ分かってんだよ!そんな顔されなくても…。日本人の方が普通似合うっての!笑ってくれても構わないぜ、」


山本がいきなり立ち上がり、獄寺君の肩を勢いよく掴んだ。
首が取れるんじゃないかってくらい(二回目)凄い勢いで首を横に振った。


「おかしくないよ!全然おかしくない!!き……」


山本がハッとなって固まる。
そう!俺の狙いはまずそこにあったんだ。
山本に可愛いとか綺麗だ、って言わせたかった。

山本の顔がじゅわじゅわとみるみるうちに赤くなっていく。
さあ!頑張れ山本!せっかくここまでセッティングしたんだから、くっついてくれよお願いだから!

そんな俺の願いも虚しく……、


「き……っと、ツナも惚れ直すよ」


今度はギャグ漫画みたいにズザーッと地面を滑りそうになった。
だーかーらー何で俺なんだよ!
肝心なとこで俺の名前を出さないでくれ!


「そう、かな……」


何で獄寺君も照れて、嬉しそうな顔しちゃうの!?
あぁ、山本もちょっと残念そうに笑ってるし…。

ああ…こんなつもりじゃなかったんだけど……いや、
まだ作戦は全部終わっていない。

俺は獄寺君に急いで電話をかけた。


「もしもし、俺なんだけど…うん、今日行けなくなっちゃったんだ。うん、本当にごめんね。あっ、二人で夏祭り楽しんできてね!これ十代目命令」


獄寺君があからさまに不機嫌になって、山本につっかかる。
山本がいつものように笑って、獄寺君をまあまあと宥める。

そして何だかんだ言って獄寺君が先に夏祭りの会場に向かって歩き出した。山本も慌てて追いかける。
つーか、あからさまに嬉しそうな顔すんなよ山本。
……まあ、いいや。
これからが本当の作戦だよ。

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