BOOK03

□@.こんな雨の日には
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ぽつ、と獄寺の頬に雨の粒が落ちる。
思わず空を見上げると、雨雲が頭上を漂っていた。
(あー…一降りくるかな)
そう思った瞬間に、雨が降り注ぐ。

ついてねーの。
獄寺は唇を尖らせて歩きだした。
雨で髪もシャツも、肌に張り付く。


傘、もってないし……
こんな雨の日には……


気持ち足を早めに進めて、お目当ての暖簾をくぐる。


「ちっす、」

「あぁ?獄寺君じゃねえかい!どうしたんでい、風邪ひくぞ」


そう言って、急いで奥からバスタオルを持ってきた剛は、獄寺の小さな頭を包んだ。
ふわり、と石鹸の匂いが鼻を擽った、
その匂いにほっとした矢先、ガシガシと髪をバスタオルで強引に拭かれる。


「いたっ!痛いって!!」

「ん?」


獄寺がバスタオルを剛からひったくる。
そして唇を尖らせて、剛を睨み上げた。


「痛い!手加減しろよ!息子もバカ力なら親もバカ力なんだな」


似た者親子、とふ、と獄寺が微笑う。
剛は苦笑して頬を掻いた。
あー、武が惚れている理由がなんとなく分かった気がしたな、と剛は思った。

またガラリと引き戸が開く音がする。
と、同時にただいま!と山本の声が店内に響く。


「あれっ、獄寺!すげー濡れてるじゃん!風邪ひいたらどうすんの!?」


慌てて獄寺に駆け寄る山本は、バスタオルを獄寺から取り上げ、ふわりと獄寺の小さな頭を包んだ。
そして、髪の毛一本一本の滴を丁寧に拭うかのように優しく拭き始めた。

獄寺も今度は素直に頭を預け、大人しくしている。
そんな獄寺を慈しむように山本は見つめる。

息子をとられた獄寺相手にか、獄寺が素直に受けいれている息子に対してか、なんだか負けたような気持ちになった剛なのでした。

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