お題

□02.溶けたガラスの靴
1ページ/1ページ




12時になれば素敵な魔法は解けてしまうというのに、何故、落としたガラスの靴だけは溶けなかったのだろう?


「そんなの物語だからに決まってるじゃねーか」

「えー、でもさー…」

「大体な、魔法使いが南瓜を馬車に変えたりする時点で可笑しいだろ」


俺は手にしていたシンデレラの絵本に目を落とした。

そうだよな。普通、そこから可笑しいんだよな。有り得ない話なんだ。


「そっか、ガラスの靴まで溶けちゃったらシンデレラどこにいるか分からなくなっちゃうもんな!」

「ふん、俺なら魔法が解ける二十分前には余裕もって城から出てるけどな」


おいおいシンデレラは王子様との躍りに夢中になってたんだぜ。
と言おうとして止めた。


「じゃあもし、獄寺が踊ってる相手が俺だったら…?」


息を呑んだら、僅かな沈黙。
その後に獄寺が鼻で笑った。


「そんなのもっと早くに切り上げるに決まってるだろ!」


そう言って悪戯っぽく笑った獄寺。
俺も釣られて笑った。


「そっか、なら俺は…12時になってもお前を抱き締めて、絶対離さないよ」

「はっ、できんのかよ?」

「ハハハ、12時どころか一生離さない自信があるぜ?」


その自信はどっから来るんだよ、と嬉しそうに頬を緩めた獄寺に頭を小突かれた。



End

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ