お題

□06.回る校庭
1ページ/1ページ




今日の体育は持久走。
走り慣れた校庭では、つまらないし物足りない気もするが、大好きな体育の授業だからな!


「うーしっ!やるぞー!」


屈伸して伸脚して、手を組んで伸びをして腰を捻る。
こうやって軽いストレッチして体慣らさないと、準備が肝心なのな。


「武こんな時ばっか張り切るよな〜」

「全くだぜ、授業の時は全くやる気ねぇのによ〜」

「ハハハ、うるせーよ!お前らも同じようなモンだろ!」

「ばっか!全然違ぇよ!」


田中が急に小声になった。
他の奴等が田中に耳を傾けるから、俺もつられて耳を傾ける。


「女子にいいとこ見せるチャンスだからに決まってるだろ…!」


何だよ、やっぱ同じようなモンじゃん。
俺だって、獄寺にカッコイイとこ見せたいし、欲を張るなら、見直してもらいたい。

呆れた様にとも挑発的にともとれる、それでもどこか優しく微笑んで……
(やるじゃねえか、野球バカ)
なんて!なんてなっ!!

自然にニヤニヤしてたら、同じようにニヤニヤした顔で奴等が俺を囲んでいた。


「山本〜!お前もかよーっ」

「誰に見てもらいたいんだよ!お前なら何もしなくてもモテモテじゃねーか」

「ハハ、そんなことねーよ」


実際、獄寺はツナに夢中だし。
俺のことなんか見てくれない。


「俺、英さんに見てもらいてぇなあ…」

「あっ、じゃあ俺、東雲さん!武は?」

「んー、獄寺かな…」

「「え?」」


ピー、と笛が鳴った。
位置について、次の笛の音で走り出す。

獄寺の方をふと見れば、獄寺とバッチリ視線が合った。

へらっと笑って、ヒラヒラと手を振ると、獄寺の口角が一瞬、ほんの一瞬だけど緩く持ち上がった。その瞬間は眉間の皺もなくなっていた。
慌てて唇をヘの字に曲げて、眉を寄せるのが、また可愛くて。

これなら、校庭何周でも回れる気がした。


―――8059周、回ります!!



End

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ