山獄

□好きと嫌いの交差点
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山本という男は常日頃から人を大事にする男だった。
それは家族や友人は勿論のこと、周りの人に然り同じことが言えるのだ、と。

父、剛は言った。
嫌いだと思うのではなく、苦手だと思え。そうすれば全て否定する訳ではないのだから違う角度でその人をよく見ることができるだろう?
それでも嫌だと思うのは、きっと、その人の上辺だけしか見ず、その人から目を逸らし、ちゃんと向き合っていないだけのことだ。

山本は身をもってそのことを体験した。
それが獄寺隼人との出会いだった。

最初は獄寺のことが苦手だった。
自分のことを嫌う相手から無意識に目を逸らしていた。

しかし、未来で獄寺の過去を知り、獄寺と向き合ったことから、山本は獄寺に急速に惹かれていった。

いつの間にか、山本の中で獄寺は何に換えても大切にしたい存在へと変わっていた。

大切にしたい。
その想いが強いからこそ、山本は何もできずにいた。

(獄寺はツナのことが好きだから…)

だから今日も山本は、綱吉に向ける獄寺の優しい表情を心が強く掻きむしられるような想いで見つめる。
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