山獄

□嘘と本当とホントとウソ
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獄寺のことが好きなんだ。

と、気付いたばかりだった。
あまり恋愛に興味のなかった俺は、どうしたらよいか分からず、友達という関係で割と満足していた。
まあ元々そういうのには淡白な方だと自分で思うし、周りの友達とかツナの話を聞いていると、親しい友人ってだけでも恵まれた状況下なのかな、と思っていた。


「おい武、お前さ…あの獄寺と仲良かったよな?」

「獄寺…?」


朝練が終わって着替えている途中、クラスメートに掴まった。
ちょっと耳を貸せば、獄寺の名前がでてきて思わず眉を寄せる。


「ふつーに仲いいけど…どうした?」

「いや、実はな……」



“獄寺に彼女ができたらしい”

クラスメートが吹き込んだのは、そんな聞きたくもない噂だった。
噂だと分かっていても落ち込んだ。

何が恵まれた状況下だ。
何が友達で満足なんだ。
誰が淡白なんだ。

よく考えたら恋愛とか以前に男同士だし、友達から先にどうやって進めようがあると言うんだ。
それに、まさかいるかどうかも分からない噂上の女に嫉妬するなんてな。

あー……
俺、獄寺のことが好きなんだな――

今更かよ、と思いながらも、他の誰にも感じたことがない感情を抱いて、
変な感じだけど、初めて恋心が自分の中に芽生えた気がした。


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