山獄

□日進月歩
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好きだ。
とは言えなかった。

結局、というより、まあ元より、生涯言わないつもりでいたけど。
今もこの想いは墓場にまで持って行くつもりでいる。


忠誠を交わしてから十年、右腕となってから半年。
時間が過ぎるだけ恋しさは積もる。


“注目のバッター山本武……”
“振りかぶったピッチャー竹下、投げて…打ったーーー!大きい!大きい!ホームラーーン!!”

プロの道を選んだ山本は、当初は注目さえされなかったものの、この半年で完全に有名人となり、今ではすっかり目の選手となっている。

すっかりブラウン管の中の人になってしまった。
半年前まで肩を並べていた愛しき友人は、手の届かない人へとなってしまった。


“さすが今シーズン最も活躍している山本選手ですね。”
“先日の試合でも2アウトランナー1、2塁という窮地で逆転ホームランを放ちチームを優勝に導いた山本選手がヒーローインタビューを受けていましたが、この調子では今日も…”


プツッ…
笑顔でベースを回る山本がアップになって映ったところで、テレビを消した。

そろそろ任務の時間だ。
さあ、そろそろ。陽の当たるアイツがいる場所とは遠い、血腥い暗い戦場へと向かおうか。
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