山獄
□『年上は全員敵!』
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「沢田さん、お疲れッス!」
野球部など男が集まる場には無い華やかな笑顔で後輩ツナに柔らかそうなタオルを渡すのは後輩でマネージャーの獄寺。
ツナに一頻りエールを送れば、後はテキトウに他の部員達に労いの言葉をかけタオルを渡していく。
獄寺は男だ。
しかし他の野郎にはない華がある。
毎日太陽の下にいるとは思えない透き通るような白い肌も、日本人離れした柔らかな銀の髪と翠の眸も。
獄寺の全てが綺麗や可愛いなどと形容できるものだった。
特にツナに向ける笑顔には、場の空気が和み爽やかになる。
俺達部員は、男子マネージャーにメロメロなんだ。
だからうちには女子マネージャーなんていない、だって皆獄寺狙いか彼女がいるかなんだから。
俺は断然前者なんだけど。
そんな我らが南ちゃん獄寺。
彼に手を出せないのは彼はツナを溺愛しているからだ。
獄寺はツナがいるから野球部のマネージャーになったようなもんだし。
「ほらよ、エース」
「おう、いつもありがとな」
首にタオルをかけ、獄寺の頭を撫でると、獄寺は止めろって腕で俺の手を制して睨み付けた。
「できればエースじゃなくて山本先輩って呼んで欲しいのなー」
「ヤマモトセンパイ」
「うわー、すげえ棒読み」
苦笑しながらもタオルの礼を告げて、水飲み場へ走った。
顔真っ赤なの冷やさねぇと。