山獄

□One-way lover
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獄寺と晴れて付き合うことになった。
それが3ヶ月前。
それから彼氏という恋人らしいことなど何もなく、3ヶ月が過ぎ今に至る。

やっと付き合えた可愛い獄寺。
獄寺が俺のこと好きなのもよく分かってるし、ツナとは別の意味で俺を大切に想ってくれていることも分かってる。

けれど手が出せないのは、多分いや絶対に俺がビビりだからだろう。
嫌われると思ったら、中々手が出せないでいる。
嫌われたくない。ずっと獄寺と一緒にいたい。だから手を出せない。
ああ、なんて情けないんだろう。

以前野球部のOBが話していた彼女のことを思い出す。
その先輩はモテモテで、でも彼女のことを溺愛してた。
しかし、その先輩は彼女と卒業後直ぐに別れてしまったらしい。
理由は、付き合い始めたら先輩の嫌な所しか見えなくなったとか愛が重いだとか飽きただとか……。
当事者でも関係者でもない俺に、それはトラウマの一種みたいなものとして植え付けられていたのだ。

獄寺には嫌われたくない。
だから、本当はツナはまだしもハルと喧嘩したり仲良さげに喋ったりしないで欲しかったりする。
でもこんな嫉妬心、獄寺に知られたら、重いしウザイめんどくせぇ。とか言われそうで恐いから、いつも苦笑しながら獄寺とハルを遠くから眺めるだけだ。

獄寺が好きなのは知ってるよ。
俺のこと、ちゃんと恋愛感情で好きなのは知ってる。
俺が告白した時、泣き出しそうな眸で真っ赤になって笑ってくれた獄寺。
あれが嘘だというなら何を本当だと信じたらいいのかさえ分からない。

どう接していいか分からなくて、どう接しても嫌われてしまうような気がして、
だから今まで通りだったら少なくとも嫌われることは無いかな、と思って、友達のフリを続けている。


「おはようっ!ツナ、獄寺」


肩を並べて歩く二人の肩を纏めて抱き締めると、ツナが苦笑しながら、おはようと振り返る。
獄寺は鬱陶しそうに払い除ける。

見た目はいつも通りなのに。
こうやって抱き竦める度に、
ああ獄寺今日も可愛いな、とか、獄寺から香るいい匂いについ髪に鼻を埋めそうになったりとか、白く細い首筋に汗が伝うのを見て首筋に唇寄せてキスマーク残したいだとか、また少し痩せたかなって朝昼晩世話してやりたいとか細い腰抱き締めたいって思ったりだとか……、
こんな一瞬でも獄寺ばかり変に意識しちゃうからやってらんない。
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