感謝感激雨嵐

□たった二文字の言葉さえ
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「実はね獄寺君が、結婚するんだ…」


俺は耳を疑った。
愕然として立ち竦んだ。
何もかもが、震えた。



―――久しぶりにツナから電話がかかってきて、世間話をしてから、本題へと促したのは俺だった。
ツナは忙しい。今俺はシーズンオフだけど年中忙しいツナが俺と世間話をするためだけに電話してくる筈がなかった。
その内容というものが獄寺が結婚するから帰って来れないかということだった。
ツナに詳しく聞くと、ボンゴレが半ば無理矢理開催したお見合いで知り合った女性らしく、もう3年の付き合いだという。

(21で知り合い、24で漸くゴールインという訳か……。)
俺はツナに、なるべく行く、という主旨を告げて電話を切った。
俺達はもう24歳だ。結婚しても、付き合っている女性がいてもおかしくない歳だった。


「は…ハハハ……」


短い前髪掻き上げながら、乾いた笑いを溢し、倒れるようにソファに腰を下ろす。
膝に肘を付いて前髪を掻き上げたまま額を押さえ俯く。

“結婚”……
まさか、獄寺が……なんて……。

自分じゃない誰かの隣で幸せそうに微笑む彼の姿なんて、見たくないのに。
行かなければ、俺は…俺は…獄寺の、友人だから……。
目が熱い、そう思った一瞬で、溢れた涙は止められなかった。

でも今は、少しだけ、泣かせて。
それから荷造りでも遅くはない筈。
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