お題
□5.変態は嫌いなんだよ!
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アイツに受けたストーカー紛いの侮辱の数々。
今まで被害届を出さず、法廷に訴えて裁判を起こさなかった自分を心から褒めてやりたい。
今日も屋上で、まるでストレスを吐き出すようにタバコの煙を吐き出していたら、山本が隣にやってきた。
肩を抱いて耳元で、山本はいつものように囁く。
「好きだぜ獄寺」
毎日毎日、何の嫌がらせのつもりでこんなことを……。
そんなに俺をからかうのが楽しいか。
煙草の火をフェンスで揉み消し、携帯灰皿に捨てた。
「なあマジで結婚してくれよ」
「テメエ……」
マジで人をおちょくるのもいい加減にしろよ。
ギッと山本を睨み付けた。
「ふざけんな!何のつもりかしらねえが、人をからかうんじゃねえっ!」
「ちが…」
「それにな!俺は変態なんか大っ嫌いなんだよ!!」
シン、と静まる空気。
俺は一気に怒鳴ったからか、肩から息をしていた。
普段出さないとこから声を出したのか、煙草を吸った後からだからか、喉がチリチリと痛い。でもスッキリした。
「そっ、か…悪かったな」
山本が眉を下げて悲しそうに笑う。
何故かズキリと胸が痛む。
煙草を吸った後だからだろうか。
「俺、嫌われちゃってたのな…」
「そ…そうじゃなくて、だな……」
シュンと肩を落とした山本を見ていると、胸が締め付けられて、どうしようもなくて、いてもたってもいられなくて…
口が勝手に動いてしまっていた。
「べ、別に…。言ったほどそんな嫌いじゃねえよ、お前のこと…」
山本の顔がパアッと明るくなって、ガバッと抱き着いてきた。
思わず倒れそうになったけど、何とかデカイ図体を受け止めた。
ぎゅうぎゅうに抱き締めてくる山本の肩をポンポンと叩きながら思った。
変態は嫌いだけど、
という言葉は今は心の内にしまっておこう…と。
End