感謝感激雨嵐
□愛してるの連鎖
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甲子園出場はできたものの初戦で惨敗してしまった俺達の夏は終わった。
野球部の奴らも、後輩に熱心に指導している者もいれば、大学受験に向けて勉強に力を入れ始めた者もいる。
俺は数少ない前者だったが、後者に回ることになった。
それを最後の部活で伝えたら、先輩〜とか後輩に泣きつかれたり、裏切り者〜とダチにもみくちゃにされたりしたけど。
部活から帰って、真っ先にカウンターで親父にその経緯を話すと、親父は涙ぐみながら、いいダチをもったな〜、と快く了承してくれた。
「おい武!」
「んー?」
軽いランニングと筋トレと素振りを終えて、風呂から上がったら、親父が厨房の奥から手招きをしていた。
タオルを首から下げたまま厨房に入ると、親父が風呂敷に包まれた重箱を俺にずい、と差し出した。
「獄寺君によろしく言っといてくれ」
多分重箱には特上寿司やらちらし寿司やら獄寺が一人では食べきれない量が入っているんだろうな、と思い苦笑しながらも、ありがたくそれを受け取った。
「サンキューな、親父!早速獄寺に届けてくるな!」
アイツ、喜ぶだろうな。
家を出て、自然と溢れる笑みを浮かべながら重箱を出前様のチャリの荷台にくくりつけて、ペダルを漕いだ。
時計を見れば9時を回ろうとしていた。
もう飯食ったかな……。
電話をかけようと思ったが、急ぎすぎたのと浮かれていたので、どうやらケータイを家に忘れて来ちまったらしい。
(あーあ、本当に要領悪ぃのな、俺)