お題

□4.ってどこから入ってきてるんだ!
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……何だかんだで日曜日。
俺は風邪をひいてしまった。

体の節々が痛い。頭が重い。熱と共に感情が昂ってしまう。

別に楽しみにしてた訳じゃないけど…。
(日曜日!すっげー楽しみなのな!)
バカの言葉が頭で反芻する。

(絶対来いよ!逃げるのとか無しだぜ。男の約束なのな!じゃあ日曜日映画館前で9時な!)
ケータイを開くと、もう10時00分だ…。
動けね…。連絡入れようにも、指一本、口動かすのもだりぃ…。

と、その時、ケータイの着信音が鳴った。画面に映し出された名前は、

―――山本。

通話ボタンを押した。


『ごっ、獄寺っ!?』


もしもし、と言う前に大きな声が耳に響く。
いつもは煩いはずなのに、弱ってるせいか心地好い間抜けな声。


『よかったあ…!で、どうしたの?やっぱ俺と遊ぶのそんなに嫌だった…?』

「違う…っ」


思わずそう叫んでいた。


「風邪…ひいちゃって…」

『え!大丈夫か?そんな辛いの…?ごめんな、俺…』


相変わらず一気に喋るバカ。
もう頭もクラクラして回らなくて、なんかじわじわ込み上げてくるし…。


「いいからっ、助けろよバカ!」

『っ!』


ブツッ、プープー…
切れた……。

何だよ、アイツ…。
あんな恥ずかしいことを口走ってしまったのに…。
どうするつもりだよ、これから…。
まあアイツは友達の多い奴だし、俺じゃなくたって他の奴と……


「獄寺っ!」


じわりと涙さえ危うく込み上げそうになった頃、あの間抜け声が聞こえた。

…ん?どこから…?
と辺りを見渡す。
玄関の鍵はかけてるし…。天井?まさかな…。ベランダの窓は…だってここ八階だし…。

ドンドン!ドンドン!
あ、直ぐ横の窓を叩く音が聞こえる。

まさか…。
重い体に鞭を打って、揺れるカーテンを開ける。

目の前には窓を叩こうとしている山本。
そしていきなりカーテンが開いたことに驚いているのか驚きに目が見開いていた。
しかし、それは一瞬で変わって、気が抜ける程の笑顔になった。

窓を開けて入ってくるなり山本は俺を抱き締めた。


「大丈夫か…?辛そうだな?」


俺の頬を撫でて、優しい眸をした。
何だか居たたまれなくて、熱で火照る顔を逸らした。


「っどっから入ってきてんだバカ!」

「いでっ!」


頭を殴ってもにやけてたので、その緩んだ面を両方から抓った。



End

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