お題

□2.もしかして記憶喪失?
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「良かった!気が付いたんだね獄寺君!」


十代目……


「ったく、天下ボンゴレボスの右腕が油断なんて情けねぇな」


リボーンさん……


「覚えてないのか?お前頭ぶち抜かれたんだぜ?まあ、奇跡的に脳には掠りもしてなかったんだけどよ」


シャマル……

ドサリ、と何かが重く地面に落ちる音がして、病室の入口に眸だけゆっくり向けた。

長身の、黒髪の青年が、瞠目して俺を見つめていた。


「山本!獄寺君が目を覚ましたよ!!」

「ごく、でら…」


……誰だ?
なんて言ってしまったら、コイツは泣いてしまうんじゃないか、となんとなく思った。

しかし、俺の表情を見て何かを悟ったかのように、彼は困惑に表情をくしゃりと歪めた。


「獄寺…?」


ああ、俺、記憶喪失なのか。
そう思ったのは、体が、心が、コイツを覚えてるかのようにざわつくからだ。

生きて帰ってこれてよかった、と思った。
抱き締めて欲しい、と感じた。


「迷惑、かけて悪かったな」


微笑むと、ソイツは首を横に振って、小さく唇を噛み締めて、顔を少し俯けた。
十代目達はソイツの広い肩を叩いて病室から出ていく。

ああ、気を使われた。と思うと同時にコイツとの関係も分かったような気がした。
普通はあり得ねぇって思うけど、ああ、笑える程しっくりきた。

嗚咽が聴こえる。
泣いてる、って思ったら胸が締め付けられた。


「山本…」


自然と口から、渇れの名前が零れ落ちた。
山本はハッと顔を上げて、涙でぐしゃぐしゃな顔で俺を見た。


「山本だ」


思い出した。
笑うと、山本が獄寺あ、って抱き付いてきて、子供みたいに泣き始めた。

コイツがこんな泣いてるとこ見んの初めてだな、
と、思いながら、山本のいつもよりボサボサな髪を包み込むように撫で続けた。


End

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