お題
□1.お願いだから消えてくれ
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アイツは天性のストーカーだ。
足音や気配を自由に隠すことなんてアイツにとって赤子の手を捻るくらい簡単なことだ。
全く油断できない奴だ。
例えば普通に学校生活を送る中――
「獄寺ー」
俺は心底嫌そうに顔を顰めて、深い溜め息を吐く。
いつの間にか目の前や隣に山本がいることなんて日常茶飯事すぎてもう慣れてしまった。
例えば休日の日――
「獄寺ー」
外から俺を呼ぶ呑気な声を平然な態度で無視する。
山本が俺の家の前にニコニコとしながら平気で居座っていることも、もう慣れた。
時に中に入れてくれと騒いでみたり、インターホンを連打したり、どうやって入って来たのか…ベランダに居て窓を叩いていたりしているが、もうどうでもよくなってきた。
例えば喧嘩中――
「獄寺ー」
またかよ、と舌打ちする。
たくさんの不良をニコニコと掻き分けながら来た山本が、俺の手首掴んでやっぱりニコニコ笑いながら、走ってその喧嘩の場から連れ去る。
余計にイライラする。だからもう喧嘩はしないって決めた。
「獄寺ー」
「この…!黙ってればちょこまかと……毎回毎回目障りなんだよ!頼むから俺の視界から消えてくれ!」
「えー、無理だよ。だって俺はずっと獄寺が視界にいなきゃ不安だもん」
相変わらずニコニコと笑いながら、俺の心からの願いを呆気なく一蹴りした。
胃がキリキリと痛い…。
このヘラヘラ顔を見ていると怒る気力もなくなってくる。
このムカつくくらい爽やかなストーカーのせいで、絶対にいつか俺の胃には穴が空くだろう。
End