お題

□05.人魚の中途半端な愛
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沫になって消え逝く想いなら、よかったんだ。いっそ、その程度の想いなら…。


「獄寺、大好き」

「……」


俺は何も答えてやれない。
だから山本は悲しげにいつも笑う。
眸が訴えている。

――なあ、獄寺も言ってよ。


「なあ大好きだよ」


不安気に何度も繰り返される愛の言葉はまるで泡沫のようだ。
言ったら、直ぐに消えてしまう言葉。

そんな一瞬より俺は永遠が欲しいから、お前に一生愛を示すことで、証明する。

覚えてろ、バカ。
俺が下になってあんあん喘ぐのも、抱かれるのも、大人しくキスされんのも…
全部お前だけだ。


いっそ、恋が破れれば、海に還れる人魚のように。
泡沫になって消える想いのように。
中途半端な恋がよかった。


「好きだよ獄寺…大好き……」


なあ、お前はあと何年、いや、何日俺を好きでいてくれる?

お前に見離されたら、俺も泡になって消えて無くなればよかったのに。

藁にも縋る思いで山本に縋りついてる俺を、どうか一生突き飛ばさないで。
泡沫になっても、愛してると言って。



End

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