お題

□01.毒林檎を食べそこねた
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白雪姫は毒林檎を食べて死んだ。
というのは語弊がある。
喉に毒林檎を詰まらせただけだ。

これでは、毒林檎を食べ損ねたのと一緒だろう?

――毒林檎の毒はどこにいったの……?


「ほら、お前の相棒だ」


そう言って獄寺が俺に差し出したのは、時雨金時と匣だった。

忘れ物だぞ、そう言って面倒そうに俺を睨み付ける獄寺。
思わず漏れる苦笑。

俺はマフィアになった。
悪を殺め、自分が悪になる裏社会を自ら選んだ。

否、自らと言えば語弊になる。
ツナと獄寺がいる、この社会を選んだ。


獄寺は言った。
「お前はマフィアに向いてない」
俺は笑って、大丈夫だと言った。
「やっぱりお前は向いてない」
今度は悲しそうに睫を伏せた。

「お前は野球選手になって、幸せになるべきだよ」

俺は獄寺の反対を押し切ってマフィアという道を選んだ。

―――俺は差し出された毒林檎を食べ損ねたのと一緒だ。

あの時、違う道を選んでいたら俺は幸せになれた?

―――毒林檎を食べていたら、魔法のキスで助けてくれた王子様と結ばれた、あの姫のように。

獄寺の傍にいないことが幸せだった?

―――林檎に含まれていたのは毒じゃなくて甘い幸せだったの。


そんなの違うよ。


「俺の相棒(パートナー)はお前だろ」


例え俺があの時、違う道を選んでいても、運命は決まっているよ。
ずっと、一生、お前の近くに……


―――毒林檎は物語を面白くさせる為の、ただのスパイスでした。



End

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